テロぼくめつの冒険日誌

（以下バージョン7.5までのネタバレがあります。）



ひとつ前の日誌（３２）に続いて「火」について見ていきます。


クエスト575「たりない何か」。バージョン7.0の前提クエストです。
バージョン1の最初にエテーネの村がネルゲルにより焼き討ちにあった時に少年イバンが亡くなり、
その転生者である少年ラジがエテーネの村復興のあとにやぐらの飾りを直すのですが、焼き討ち前のものとはだいぶ異なった見た目になっていて、翼がより目立った「馬」の造形になります。
　 　
▲焼き討ち前のエテーネの村のやぐら
　
▲復興されたエテーネの村のやぐら


日誌（２０）（２１）で触れていたのですが、このクエストを皮切りに「馬」がバージョン7で次々と出てきます。


「馬」は世界的に「火」や「太陽」と結び付けられ、生命力の象徴であることが多いそうです。
このゲームでは、クエスト783 「真白き影を追いかけて」で、その昔フーラズーラに母親を目の目で喰われ、心を失っていた少年リズクが、
ある日馬小屋でぼんやりしていると、迷い込んできた白い子猫と出会い、この猫を飼うことで生きる力を取り戻していったそうです。

そして、馬小屋という場所が気になるところで、日誌（３２）で書いたベルティネという5月1日の祭りのイヴの夜に馬小屋でプリンスが生まれるという伝承があります。
JULA出版局の『マビノギオン　中世ウェールズ幻想物語集』第一枝「ダヴェドの大公プイス」p.44-45によると、
ベルティネとよく似たカラン・マイという5月1日の祭りの前夜の出来事が描かれています。

「テイルノンの館には、一頭の雌馬がいた。領地内のどんな馬よりも美しくりっぱな馬だといわれていた。毎年、五月一日の前夜に、この馬は、一頭の仔馬を産んだ。（中略）扉のそばに、見よ、むつきに包まれた男の子が置かれていた。」

この赤子がのちにプラデリ（プリデリ、プレデリとも）と名付けられ、統治者となるのですが、
東京堂出版の『ケルト文化事典』p.121-122「馬」によると、プラデリの母リアンノン（フリアノンとも）がウェールズの地に異界から馬に乗りやって来たことや、赤子のプラデリが馬小屋のそばに置き去りになったことから、
リアンノンが馬と関わる性格を本質的に持っていて、ケルトの馬の女神であるエポナ神の類例であると推論されています。
エポナ神は、ヨーロッパ大陸を通じてその痕跡が見つかり、エポナ神に捧げられた彫像や祭壇が多数発掘されていて、馬の女神崇拝を裏付ける証拠になっているそうです（論創社『ケルト神話・伝承事典』p.56-57）。

『マビノギオン』第一枝では、馬小屋のそばに赤子が置かれ、母親が異界出身という特別な血筋で、のちに赤子は成長して統治者となるのに対して、
クエスト783では、馬小屋に現れた白い子猫が、母親が王族・父親が平民という血筋の少年リズクの生命力を取り戻させ、のちに少年は成長して統治者になります。
色々違いはあるものの、馬小屋、母親が特別な血筋、馬小屋と関わった後に統治者が誕生するなど、部分的に似ているところはあります。
ただし、クエスト783が『マビノギオン』を参照しているかは不明です。
少年リズクが生きる力を取り戻す契機となったのが、生命力の象徴である馬が住む馬小屋だったことや、
国王リズクが戦いは苦手なものの乗馬は得意であるという設定も気になりました。


また、馬は「火」のほかにも「水」「風」「土」の四大元素とつながりがあるケースもあるそうです。
大修館書店の『イメージ・シンボル事典』p.342-347「ウマ」などによると、北欧神話視点ではオーディンの馬スレイプニルの8本足は、強い「風」を巻き起こすそうです。
このゲームでは両手剣でスレイプニールという武器が出ていますが、「開戦時 75%でピオラ2段階」というのは上記の8本足を意識してのものなのかどうかは不明です。



意味のある偶然の一致（共時性）について（３４）へ続きます。