(以下バージョン7.6(前期)までのネタバレがあります。)
ここから、日誌(1)の最初の方で予告した、7.6(前期)のストーリーでわからなかったことに対する予想を書いてみます。
創失の塔で天井から逆さまに生えている「創失の虚木」。
これに模型を介して師匠の創生のチカラを注ぎ「反転」させると「創生の木」に、
スイッチに触れて「反転」させると地面に立つ自然の木になりましたが、
こうしたカラクリを創失を招くものが漫然と作ったのではなく、何か必要があって用意したのだと思います。
現実世界の錬金術で、逆さまに生えた木や反転と似た概念があります。
「逆立ちした木」は、「木」が錬金術の作業(オプス)、「葉」が作業の各プロセスを意味し、
天に根が向いていることから、「根」は天から栄養を摂取していることの象徴表現で、
天星郷の生誕の園の、天使フェディーラの足元にもそれらしきものが描かれていますが、
公式本の『秘聞録』p.301にはこの絵のモチーフは「樹木」とあり、これを「紋章」と書いています。
日誌(3)ではHD-2D版ドラクエ1で紋章が錬金術により作られていたことに触れましたが、天星郷の紋章はどうなんでしょうか。
創失の塔の外観は天星郷のピラーにそっくりでしたが、内装に見られる「反転」も天星郷との接点の可能性があるように見えます。
「反転」(「逆転」とも)は、「ソルウェ・エト・コアグラ(溶解せよ、そして凝固せよ)」のことで、
「溶解」(固体(肉体)を液状のもの(霊魂)に転換)と「凝固」(その逆転換)の操作をくり返すことです。
「溶解」によって肉体や思考を「原初」の状態である「第一質料」(宇宙を創造する原初の物質)に戻す必要があり、そうすることで初めてそれらの再生が可能になるそうです。
青土社の『錬金術の世界』p.49には「錬金術においては(中略)さまざまなものの物質的再誕に物質的死が必要であるように、人間の霊的再誕には霊的な死が必要なのだ」とあり、
第一質料という原初へ「溶解」によって回帰すれば、再誕が可能になるはずです。
創絶を招くものとのラストバトルでポルテの職業名は「原初」になっていますが、第一質料や錬金術との関連は不明であるものの、
「原初」という表現が、この後実現する「再誕」の伏線となっている可能性はあると思います。
深淵の咎人たちの「深淵」は原初の物質である第一質料と同義語の可能性は残っていますが、ここも錬金術との関連の有無は確定には及んでいません(日誌「深淵の咎人たちの謎(2)」)。
王都キィンベルの錬金術師ゼフの家に『初等錬金術概論』という本があり、釜錬金の錬金術のプロセスについてこう書かれています。
第一工程 焼成・溶解・分離
第二工程 腐敗・凝固・吸収
第三工程 昇華・発酵・増殖
最終工程 変質
ここでも「溶解」と「凝固」がそれぞれ別工程として書かれています。
そして、創失の世界に横たわるまどろみの少女は緑色の髪をしていましたが、ポルテと師匠は恐らく赤毛です。
創失を招くものが創った執行者も赤と緑の配色のものが多く、ラスボスの創絶の崩壊竜も赤と緑でした。
赤と緑の配色はゲーム中で錬金術が関与している可能性がたびたびありました。
不思議の魔塔の錬金術師ゾーネスの本では「究極の錬金術」を「生命を創りだす 神のみわざ」と定義し、
創失を招くものは執行者を創生していて、ポルテ一派は肉体と自我を有する魂の「分離」と「結合」(上述の溶解と凝固と同一視されることも)の描写が7.6(前期)で何度も見られました。
ポルテと師匠の分離と結合、創絶を招くものとまどろみの少女の分離、まどろみの少女とポルテの結合、ポルテとアストルティアの再誕。これらは錬金術なのでしょうか。
バージョン7の「未来への扉とまどろみの少女」というタイトルが2023年11月に発表されましたが、
その1年半前にイタリアで書かれた錬金術解説書の邦訳が発売していました。
タイトルは『魔法の門 ポルタ・マジカ』。
「ポルタ(門)」と「マジカ(魔法)」という、バージョン7の誓約の園の屋上の扉やポルテを彷彿とさせるタイトルです。
魔法の門とは、1680年にローマのパロンバーラ侯爵がエスクィリーノの丘の彼の荘園内に建てたもので、
別名を「錬金術の門(ポルタ・アルキミカ)」「ヘルメスの門(ポルタ・ヘルメティカ)」といい、
その先には錬金術の秘奥があるとされ、門にはさまざまな錬金術記号が描かれていて、
著者によると「西欧錬金術の歴史を通して唯一の造形的建築的遺産である」そうです。
祈りという鍵で扉の向こうへ行ったポルテは世界樹の儀式の秘奥に到達しましたが、
では、ポルテと師匠の魂の溶解と再結合。これは錬金術だったのか。真相は不明のままです。
おわり