手紙や日誌を書くと、原稿を読まなくてもその文を脳内で再生できる、という特技が私にはある。
長文でも覚えてしまうのだ。
意識しなくても勝手に再生されてしまう事も多いので、書く内容はハッピーにしておいた方が良い。
飴の小袋を一つ手に取った。
ちょっと珍しいのど飴で、市販ではあまり見かけない。
大切な人に勧められてAmazonで買っていた、思い出深い飴だった。
そういえばそろそろ無くなりそうだったっけ。
次は、もう注文しないだろう。
もし最後の一個ならそのつもりで別れを惜しみたい。
何個残っているかしら、と袋の中を覗き込もうとしたが、やめた。
最後だと分かっているから、大切に食べようとする。
でも人生って、これが最後だと分からない事も多い。その時その時一回を大切にしなければならない。
もしそれが最後の会話になっても悔いが残らないように。
いつでも相手を大切にしなければ。
ふっと、ひとつ溜息をつき、最後から何個目かの飴を祈るように溶かした。
実はハーブ味は苦手だったので、勧められた当初は困っていた。
しかし毎日口にしていると段々慣れていくようで。
今ではこの独特な香りが好きになっていた。
人は、変わるのだ。
心も、変わる。
変わらないのは思い出だけ。
二人の写真が消えてしまった絵葉書は、ほろ苦いハーブ味の思い出。
ich liebe dich immer noch.