俺は学校ってやつが嫌いでね、どうやって誤魔化すかばかり考えて生きてきたよ。
12月30日 午前9時
私は暖かくなってきた陽の光眩しい公園でホームレスのおじいちゃんと雑談をしていた。
言われた事を黙ってやるより、どうやって切り抜けようか考える方が有意義だったりもしますよね。
パンクした自転車に全財産を詰め込んでいる彼に、何を言ったら失礼になってしまうだろうか。
そんなつまらない考えで返答しているから、私の言葉は枯葉のようにカサカサしている。
私は何故かホームレスと関わる事がある。
おじいちゃんとのやり取りも上の空で、昔の事を思い出していた。
知人に、その男性どうしたの?と聞かれて
道端でうずくまってて死にたいって言ってるから拾ってきた。
と答えたら笑われた。
街を歩いていたら見た事のある男がホームレスになっていた。
一瞬、人違いも脳裏によぎったが同級生なので見間違えたりはしない。
何してるのー?
隣に座って話しかけた。
沢山の人が目の前を通り過ぎる。
変な物を見るような顔でチラ見していく人もいれば、私達が存在しないかのように目を合わせない人もいる。
二人が座っている一畳分程のスペースだけ異世界のようだった。
大学に通っていたが友達に借りた車で事故ってしまい、そこから借金が出来て学校にも通えなくなり家も追い出され路頭に迷っていたそうだ。
退学して借金あるなら働かないと!
私が若さ故の火の玉ストレートをデッドボールさせると
いや…もういい
死にたい
と言って彼は泣いた。
何言ってんのよ!行くよっ!
またも若さ故の勢いで、私は彼を引きずるようにして歩き出した。
コンビニで下着類と食料と、あちこち怪我をしているようだったのでマキロンや絆創膏等を買った。
ビジネスホテルに男をぶち込み、風呂に入らせ着替えさせ食事を取らせた。
安全で暖かいベットで寝ないと前向きにはなれないよ。
また明日来るから、今日はゆっくり休んでね。
傷に絆創膏をペシペシ貼りながらそう言って私は帰った。
翌日、急いで洗濯して乾かした服を持ってホテルへ行った。
独りにして大丈夫だったかな、生きてるよね?
生存の心配をしつつドアを開ける。
暗い部屋でナチスの捕虜みたいに痩せた男が座っていた。
目を合わさず「すまない」と言った彼の声は夜の海のようだった。
重く、暗く、微かな声。
彼の心から絶望が溢れて、部屋の隅々まで闇で満たしていた。
カーテンの裾から僅かに覗く外界の光が、彼の闇に拒絶されて悲しそうに揺れていた。
ゴハン買ってきたよー。
あと服、洗ってきたから着てー。
コンビニの袋を目の前に置いても微動だにしない。
このままじゃ食べないかもなぁと思い、おにぎりの袋をメリメリ開けて彼の口…ではなく鼻の穴に突っ込んでやった。
ん~?間違えたかなぁ~?
とアミバ風に言ったら
俺、死んじゃうじゃん
と彼は少し、笑った。