※ 注意!
【 この日誌はバージョン5(魔界)のメインストーリーにおけるネタバレを含んでいます 】
【 この日誌には妄想、憶測、推論が含まれております。 広い心でお読み下さい 】
よろしいですか?
7.【 息子とゼクレス魔導国に対する偏愛 】
夫であるイーヴ王がゼクレス魔導国を去ってから、エルガドーラは王国の維持と発展に全身全霊を捧げました。老獪な大貴族たちを相手に時には虚勢を張り、時には利益をちらつかせて交渉し、なんとか王家としての権威を守り続けました。また、当時の魔界は魔幻都市ゴーラの王であるマデサゴーラが大魔王に就任し一応の安定を保っていたものの、暴れ馬と評されるバルディスタ要塞国が隣国のネクロデア王国を攻め滅ぼすなど対外的には予断を許さない状況が続いていたのです。
この頃のエルガドーラにとって唯一の癒しとなったのは息子アスバルの存在でした。
母親思いの優しさと聡明さ、眉目秀麗な面立ち、そして父イーヴ譲りの強大な魔力を兼ね備えたアスバルはエルガドーラの誇りであり全てでした。
「 ゼクレス魔導国を魔界一の強国に発展させ、アスバルを立派な王にする 」
それがエルガドーラの存在意義だったのです。
また、弟オジャロスが予想外にも優秀な補佐役だったこともエルガドーラを多いに助ける結果となりました。生来プライドが高く他人に頭を下げることを苦手とするエルガドーラでしたが、腰が低く臨機応変に立ち回れるオジャロスが王家と貴族・平民たちとの間の緩衝材となり、彼らの不満の受け手となってくれていたのです。エルガドーラはオジャロスのことを決して好いてはいなかったし過剰な信頼を寄せることもありませんでしたが、それでも弟の働きぶりを評価していました。
しかしその評価を裏切るがごとく、オジャロスは連絡係ヴァラックからもたらされるイーヴ王が姉エルガドーラに宛てた手紙を、姉に渡すことなく全て途中で握りつぶしました。
エルガドーラは夫イーヴに対して 「 得体の知れない怪物 」 のような恐怖を感じたとはいえ、その愛はいまだ失われてはいませんでした。一緒にアストルティアで暮らすという夫の言うことは理解できないものの、それでも夫に会いたい、消息を知りたいという思いは募っていきました。この頃にイーヴからの手紙をオジャロスが素直にエルガドーラに渡していれば異なる未来があったのかもしれません。ですが、そのことを知るよしもない彼女は二度と夫に会えない寂しさをアスバルに全ての愛情を注ぐことで紛らわせたのです。
日に日に夫イーヴに面差しが似ていくアスバルを見て、エルガドーラは満足するとともに一抹の不安を感じていました。
アスバルは夫と同様にアストルティアに関心を持っていたのです。
そんな時、あの少年が現われました。
宝石商を名乗る赤毛の少年ユシュカ。
人懐っこく見聞の広いユシュカは、城の中しか知らずに育ったアスバルとすぐに打ち解けました。
この時、ユシュカ150歳、アスバル130歳。ヒトに換算すれば15歳と13歳。
未来に無限の可能性を秘めた少年たちでした。
アスバルがアストルティアに強い憧れを抱いていることを知ったユシュカは、師匠レディウルフから貰ったアストルティア産のコンパスを渡して言いました。
「 一緒にアストルティアに行こう 」
と。
そのことを知ったエルガドーラの恐怖は如何ばかりだったことでしょう。
「 夫が去って行ったアストルティアに、息子であるアスバルまでもが行ってしまう 」
夫だけでなく愛するアスバルもアストルティアに奪われるのか?
アスバルも自分を置いて去っていくのか?
自分はゼクレス魔導国を守れないのか?
………そんなことは絶対に許さないッ!
エルガドーラはユシュカを国外に追放すると共に、アスバルがユシュカに宛てて書いた「 自分もアストルティアに行きたい 」 という手紙を握りつぶし、二人の友情を引き裂きました。
さらに、身につけた者の意思を操る魔法の首輪をアスバルにつけさせ、息子を意のままに支配したのです。
8.【 それでも息子と国を愛した悲劇の女性 】
は、次の日誌で書きます。