※ 注意!
【 この日誌はバージョン5(魔界)のメインストーリーにおけるネタバレを含んでいます 】
【 この日誌には妄想、憶測、推論が含まれております。 広い心でお読み下さい 】
よろしいですか?
10.【 終章:まとめ その2 】
〇 エルガドーラの目的の変遷
エルガドーラ自身が自覚していたかは分かりませんが、僕の想像では彼女の願いは 「 劣等感の克服 」 だったと思います。彼女にとって身分制度は絶対だったので、その制度の中でいかに上に立つかを考えていたことでしょう。生まれ持った美貌と知性にあぐらをかくことなく、その素養を磨くことで 「 大貴族に嫁ぐこと 」 が彼女の当初の目的でした。そんな彼女にとって次期国王であるイーヴ王子に求婚されたことは最上の幸福だったはずです。
ところが、イーヴと結婚しただけでは周囲が彼女を見る目は変わらず無名貴族の娘として蔑まれ続けました。エルガドーラの次の目標は 「 王位継承者である男児を産んで、次期国王の母になること 」 でした。そして、待望の王子アスバルが産まれたのです。
しかしその喜びも束の間、夫イーヴは 「 アスバルに王位は継がせない 」 と言い出したのです。 「 次期国王の母 」 として周囲の尊敬を集めるというエルガドーラの目的は危機に直面しました。
大貴族たちによる内乱という危機を収めたものの夫イーヴがアストルティアに去り、エルガドーラに残されたものは息子アスバルとゼクレス魔導国だけでした。心身ともに疲れ果てた彼女は 「 アスバルを立派な王として育て、ゼクレスを自分の代で最も繁栄させること 」 を次の目標にしました。それにより心底に燻る劣等感を払拭しようとしたのでしょう。
以後130年、彼女の努力は実を結びアスバルは聡明な少年に育ちました。
そこへ現われたのがユシュカです。よりにもよってアスバルに 「 一緒にアストルティアに行こう 」 などと誘うユシュカは彼女からは唾棄すべき卑賤の輩に見えたことでしょう。二人の友情を引き裂いたエルガドーラは以後一切の妥協を許さず、息子の意思を魔法の宝石で操り 「 アスバルをゼクレス魔導国と王家を維持するための人形 」 として扱うことを己に課しました。
毒親エルガドーラの誕生です。
余談ですが物語開始時から24年前に、エルガドーラの命令でリソルがアスバルの監視役になります。しかしアスバルに懐柔されアスフェルド学園に潜入する傍らアストルティアの物品を六大陸堂に送るなど、アスバルのアストルティア好きを加速する結果となってしまいました。
そして現在。
大魔王マデサゴーラが勇者に倒され新たな大魔王選定の儀が開催されると、エルガドーラの目的は 「 アスバルを大魔王にしてゼクレス魔導国が魔界を統一する 」 という野望になりました。
アスバルが大魔王候補から外れると今度は魔界大戦を引き起こし、ミアラの宝杖の力でアスバルを太古の魔人に変貌させヴァレリアとユシュカを排しようとします。
「 アスバルが立派な王となりゼクレスが魔界全土を支配する。そのためには自分はどうなっても構わない 」
本気でそう考えていた彼女は自分の魔力の全てをアスバルに注ぎ、瀕死の状態になってしまうのでした。
魔力を失ったエルガドーラの身体はオジャロスによって下等な魔物へと再構成されてしまいます。そして、アスバルから王位を奪おうとするオジャロスに取引材料として利用されるのでした。
「 王として母を殺すか、息子として国を道連れに滅び去るか、お前の望む未来を選ぶがよい。 」
そうアスバルに迫るオジャロスの言葉を聞いた時、彼女の頭をよぎった物は何だったのか。
母として、自分がいなくても立派な息子になって欲しい。
王太合として、立派な王になって欲しい。
王家に嫁いだ女として、ゼクレス魔導国を導いて欲しい。
そう考えた彼女はあえてアスバルに憎まれ口をたたき、「 王 」 としての覚醒を促したのでしょう。
そして、アスバルの決断に満足すると
「 それでいい…
ゼクレスを頼んだぞ わが息子…
いや 魔王アスバルよ… 」
と初めて息子を王として認め、その生涯を終えたのでした。
この時、エルガドーラはようやく劣等感から解放されたのだと思います。
〇 エルガドーラの罪
エルガドーラは運命に翻弄された可哀想な女性ではありますが、だからと言って彼女の罪が許されるわけではありません。
平民を平気で差別し、魔界大戦で数多くの魔族を犠牲にした彼女はやはり断罪されて然るべきだと思うのです。
以上で 「 エルガドーラについて語る」 の日誌を終わります。
最期まで読んでくださってありがとうございました。