螺旋の紋様が目を引く施設内は、オイルの臭いが微かに漂う。
研究施設だった頃の設備を流用しているのだろう。
至る場所で蒸気が立ち上ぼり、歯車は休むことなくガチャガチャと回り続けている。
とは言え、まるで人を寄せ付けない廃墟の趣を残した外回りとは違い
内装はそれなりに整頓され、住宅らしくはなっているようだ。
家主の意向で、普段は照明を落としているらしいが
今回は撮影のため、特別に明るくしてもらった。理解しがたい意向だ。
協力していただいたのは、オーガのプライベートコンシェルジュ、ダブルバイン氏。
ムム、なるほど。これは理解できる…と思わず視線を一局に集中させると
彼女は少しだけ恥ずかしそうに、しかし凛とした態度で
自分が先史文明期の、感情を持ったアンドロイドとやらであることをサラリとゲロった。
永い眠りから目覚め、小間使いとして働く彼女もまたロボットなのである。
そう言われると、ダブルバインという一見アレな名前も
なんとなくオーラバトラーっぽく聞こえるので納得だ。これは失敬。
彼女曰く、1階は冒険者としてのユーティリティーフロア。
入ってすぐ右手のスペースは仮眠室になっており、ここでは体力の回復だけでなく
アイテムやゴールドの出し入れ、職人活動が可能である。
もっとも、ここで職人やってるのを見たことはないそうだが。
その奥には、ちょっと小粋なバーカウンター。
グランドピアノ、カジノの試遊台も置かれ、オトナの遊び空間を演出している。
この家の多くの物は廃棄品を改修したものらしい。
設定までイジりまくりで、簡単にジャックポットを出すことができた。
夢を見るくらいは自由だろう。
一方、入り口向かって左手はドレスコーナーになっていて
化粧台とクローゼット、重厚な装備を着せれたマネキンが並ぶ。
噂以上の鳥頭ぶりに閉口である。
こんな家主の趣味では到底なさそうなウサギのぬいぐるみは
おそらくダブルバイン氏の私物なのだろう。
萌えであるッ!!
そしてなんといっても一番目を引くのは、巨大な水槽に窮屈そうに収まる巨大魚。
鮮やかな藍色がどこか不気味な、ブルーナポレオンだ。
家主が釣ってきたらしく
今日も別の大物を狙って、釣りに出かけているのだとか。
…鳥頭かぶって釣り三昧とは、どういう冒険者なのか。
本当に理解しがたい。
2階もきっと理解しがたいのだろう。