思い出のショウケースに飾られた人たちが
ふいにケースの外に現れ、にっこりと微笑む。
帰ってきたよ。
あれっ、みんなが帰ってきたんだっけ?
たまには後ろを振りむいてもいい。
心が帰れる場所があってもいい。
まるで押し寄せた波に引き寄せられ、
そのまま海に漂うように体は揺られ、軽くなる。
知ってる?カヌチはナジが好きなんだよ。
この先も、みんなと共に時間を過ごせたら、こんなに嬉しいことはないんじゃないかと。
甘い夢は心地よく、また夏の夜のようにどこか息苦しくもある。
シンイに声をかけられて目を覚まし、ようやく一息をつく。
「そんなとこで寝てると、風邪をひきますよ。
でも外で寝れるのも平和だからこそですね。」
「なぁ、兄ちゃんって都へ行ってるんだっけ?」
「えっ、都? まだ夢から覚めてないようですね。
…ネロさんはきっと今も、キアラさんのところに
帰ろうとしてますよ。」
「そっか…。」
また兄ちゃんに会えるかもしれない…
そんな淡い期待が、村の人たちも
帰ってくるのではないかという錯覚を呼びよせる。
この『夢』はいつ覚めるのだろうか。
「シンちゃん、今日は一緒にゴハン食べよう。」
「いいですよ。そんな気がして、ソップさんに
エテーネルスープを作っておいてもらいました!」
「知らない間に、ここの名産品になっちゃったね。」
「ええ。でもこのスープが昔からあったと言えるぐらい
長生きして、いつネロさんが帰ってきてもいいよう
村を守っていきましょうよ。」
「うん、そうだね!」