今日はみんなに青い薬か赤い薬、どちらかを飲んでもらおうと思う。
(↑元ネタ:映画マトリックス)
青い薬を飲めば、いつもどおりのノリの日誌を読める。
赤い薬を飲めば、DQXの外の世界について何か考えることになるかもしれない。
どちらかを選んでくれ。
→青い薬を飲む
【サブキャラの日誌「ブルームウィングで飛ぶ」】
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/971387432974/view/6325303
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
→赤い薬を飲む
忘れるな。我々が見せるのは真実の世界だ。
(なりきりモーフィアス)
あれは千年前のグランゼドーラ王国に行った時のこと。
ネロドス率いる魔物に対し、アルヴァンとカミルだけではその侵攻を防げず、
王国は国軍を各領土へと派兵していた。
その夜は一つの師団が危険な防衛に赴く前の宴が催されていた。
俺はフェリナ姫の依頼をこなし、お礼として千年後と変わらぬ宴の料理を分けてもらい、
厨房近くの席で食べていた。
目立たぬようにしていたつもりだったが、一人の男が酒瓶を抱えて近づいてきた。
「あんた、遠い未来から来たんだってぇ?」
大きな体に似合った野太い声を出す男だった。
男はグラスを持ってくるよう顎で給仕に指示しながら
未来の世界の様子を矢継ぎ早に質問した。
師団長を名乗り、王国の未来を案じるその男に対し、どうやら身構える必要はなさそうだった。
「あんたの代では、勇者様は女なのか!」
男はそして声をひそめ、「で、勇者様はきれいな方なのか?」と、
下卑た、それでいて人なつこい笑顔を見せながら訊ねた。
アンルシアの容姿や戦いぶりをを伝えると
「ふぅん…まるであんたが勇者様の隣にいるような話ぶりじゃないか、がははっ」と
おおよそを見抜いているように笑った。
男の勧める酒と話に、俺もすっかり気を許して話を弾ませていた。
最近の戦について聞かれた際には、
「世の夫が『唐揚げ料理なんて手抜きだ』と言い、
妻たちが『後片付けの大変さを知らない』と怒っている」なんて冗談めかして答えた。
しかし話し終えてから、しまったと思った。
この男が聞きたかったのは、そんな戦と呼べない話だったのだろうか。
未来を案じながら明日死地に赴く者に伝える内容だったのか…。
男は一瞬キョトンとすると、かいしんの豪快な笑いをくり出した。
「そうかぁ~。さすがアンルシア様の治める世だな、がっはっは!」
そして神妙な顔をし、
「確かに、俺は料理のことは知らねぇ。これ食べたら料理長に敬礼して来ねぇとな。」
と言った。そして俺の顔を確かめるように間をおいてから
「ここの料理長、俺の嫁なんだわ、がっはっはっは!」
とまた笑い、最後に残っていた鶏の唐揚げをパクリと食べ、厨房へ向かっていった。
俺はあの男が厨房の妻に突然敬礼するのを想像し、一人でニヤッとした。
その後、今の時代のグランゼドーラで調べ物をしている時に、
彼の師団の名前を見つけた。
全滅したのは、あの夜の翌日、8月15日だった。
彼や世の男が料理の大変さをわからないのは、悪意からではない。
経験したことがないからだ。
同じように、今の王国の人々が、国を魔物から守ることの重圧もわからないだろう。
俺はあの場にいながら、あの男がどんな思いで国を守っているか、聞くことができなかった。
これまでレンダーシアやナドラガンドを守ってこれたのも、彼らの礎があればこそだったのに…。
もうすぐ彼らの命日である。その日は英霊の共同墓地に赴こうと思う。
彼と飲んだのと同じ酒を持って。