ある日、課長が話しかけてきた。ねえねえ、これすごくない?と言われ見せられたのは一冊の本だった。パラパラとページをめくると、鮮やかに色分けされた日本列島が数ページに渡り描かれている。さらに、尾張や伊賀と言った地名や戦国武将の絵が載っていたことから推察するに、日本各地の歴史的変化を時系列で解説していく本らしい。
私の個人的な意見としては、はっきり言って全く興味が湧かなかった。これまでの人生で、日本史に深く携わったことはおろか、学ぼうとすら思ったことがないのだから仕方ない。
さて、こういう場合課長の「ねえねえ、これすごくない?」という問いかけにどう返答するかが問題となる。仮にも彼は私の上司なのだ。全然興味ねえっす、という返答はあまりにも不躾ではないだろうか。では、社交辞令として感嘆の表情と共に賛美の言葉を贈るべきだろうか。いや、それをしてしまっては次に続くであろう、よりディープな会話に対応しきれなくなる事は明白である。
ここで課長の 人物像に着目してみる。温厚な性格で笑い上戸だ。冗談は通じやすい部類の人間と言って良いだろう。
以上の考察から1つの結論を導き出した。
今回の正解は
「歴史全然興味ないんですよね~www」
という返答だ。ミソは冗談っぽくwwwをつけること。そしてこれに続く会話は次の通りに予想できる。
「ダメだよ、りおるくんー。歴史くらい勉強しなきゃーww」
「いやーすいませんw読み終えたらその本貸していただけますか?それで勉強しますよw」
「あーいいよーww」
きっとこういう流れで会話は進むはずだ。私が長年培ったトーク術だ。絶対の自信がある。これでいこう。
上記の思考に至るまでわずか1秒。満を持して返答の刻来る。
「あー、ぼく歴史全然興味ないんですよねぇww」
よし、冗談っぽく言えたぞ。さあ、課長。次はあなたが私を冗談っぽくけなす順番ですよ。さあ、どうぞ。あれ?おかしいな。2秒以上経つが返答がない。不思議に思い、私は視線を本から課長の顔へと移した。
課長が、うわぁーコイツ・・・という冷めた顔でこちらを見つめていた。そして目が合うと、課長は座っていた回転椅子でくるりと踵を返し自分の席へ戻っていった。
課長の悲しそうな眼差しが目に焼き付いて離れません。りおるです。こんばんわ。
さて、先日フレンドのアステアがおもむろに自慢してきました。防衛軍のランクが昇格したそうです。色は緑ではないみたいなので、どうやら彼女も齢300才を超える仙人の領域に到達したんだなぁと思うと嬉しく、素直に祝いの言葉を述べました。
確かに、連日フレンド欄を眺める中に、定期的に足繁く防衛軍に通う彼女の姿はありました。その努力が実を結んだんだね。アステア、おめでとう。
私は、彼女を盛大に祝ってあげようと思った。
郵便局へ足を運び、一通の手紙をしたためた。
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親愛なるアステア
いつも色々手伝ってくれる、心優しい友よ。
防衛軍で昇格したと聞いて、大変嬉しく
思います。ささやかですが、祝いの品を
お贈りします。美味しく召し上がって下さい。
~祈りを込めて~ あなたの親友りおる
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彼女が喜びのあまり泣きじゃくる姿が目に浮かびますね。寝る間際だったので2分くらいで書き上げた手紙ですが、最後の一文に『祈りを込めて』と入れることで、とても祈りが込められた手紙に変貌を遂げました。何の祈りかは知りません。
手紙に封をし、郵便局員に郵送を依頼した。
うまのふんを添えて。
さあ、一体どんな反応を見せてくれるのか。今夜ログインするのが楽しみだぁ。ワクワク