「ふふふふふ、そこにいるんでしょ、見えてるんだから」
あの女、とうとうここまで来てしまった!
遠くの国で亡くなったと聞いた昔の女房が、髪を振り乱し目を爛々と輝かせ、私を迎えに来たらしい!
有難いお札を張り巡らせてはいるが、朝まで持ちこたえられるのだろうか。
じっと見たり、ばたばたと物音を立てたり、不気味な声で叫び回ったり、中に入れず苛立っているようだ。神様仏様、なんでもいいからどうかお助けを!
ああ目が回る。
あたりの物がぐるぐると回って定まらない。いや、物がじゃない、自分自身の視線がだ!ああまずい、落ち着いて何か考えなければ。狼狽えても始まらない!
なんとか気持ちを落ち着けて耳を澄ましていると、少し、静かになったようだった。自分の息づかいがはっきり聞こえる。
どうする、意を決して逆側の窓から飛び出すか・・・!そうだ、やるしかない。
いや、こっちの窓も駄目だ!
あの女、さっきまで向こうにいたと思ったら恐ろしい速さでこっちにいるじゃないか!
人間の動きとは思えない。ああ駄目だ、女の手先が小屋に入り込んできてしまっている。。。もはやこれまで。
「そのときだよ、ちょうど一番鶏が鳴いてな、女房は朝靄が晴れるようにかき消えていったよ」
とバウンズ学園長。真顔で続ける。
「それ以来、私の身の回りでは不思議なことが起きるんだ。私にちょっかいを出していると君の身も危ないかもしれないぞ」
「ちょっと学園長!そんな話、信じると思って!?子供じゃあるまいし!」
ふんと鼻を鳴らすミキ子。
「今日のところは大人しくしてるわよ・・・」
帰りにコンビニでアイスを買って、その足でアストルティア神社におもむき、お札を買っていこう。そう誓ったミキ子なのでした。
おしまい。おやすみ。
林道13922-7のお宅です。