「あら珍しいこと、お客様がいらっしゃるなんて」
毎度手前味噌ですが、お家を少し改装しました。
さてどうなったことやら。
湿原に浮かぶ一軒の屋敷がまるごと売りに出されていると言うことを聞きつけて、私はその屋敷を訪ねて行ったのです。
「このお屋敷は、旦那様がずっとが大切にされていたお宅でしてね」
そう話すお手伝いさんは今も、屋敷を守ってくれているみたいなのです。
「私達もお屋敷で働かせてもらえることをたいそう嬉しく思っておりまして」
ふうん、昔は良かった、なのかな。
「ところがあるとき、蒸発って言うのでしょうかね、突然何処かへ行ってしまわれて、それ以来、旦那様は戻っていらっしゃらないので、どうにも立ち行かなくなってしまいまして」
「お二階の奥にある寝室が旦那様のお気に入りの場所でして、そこに飾った絵画をひとりでじっと眺めているのが旦那様のいつものお姿でしたわ」
「よかったら、ご自慢のコレクションをご覧になってくださいまし」
と、お手伝いさんは私をその寝室に案内してくれた。
「これは、旦那様の肖像画ですのよ」
「なんとも優しそうな、ああ、懐かしい」
自分自身の肖像画を見つめて過ごす気分ってどんな気分なんだろな、と私は少し怪訝に思いました。
「いまにも動き出しそうな、あの日のままの旦那様・・・」
「ああ、私も絵の中に入れたらいいのに」
うーむ、絵の中に入ってまで一緒にいたいなんて、そこまでのことを考えるだなんて、よほど親しい間柄だったのだろうな。
「ときおり、旦那様の絵の中に得体の知れない女が映り込むのが憎らしくてたまりませんわ」
絵の中に入るだ、得体の知れない女だ、なにを言うのだろうこの人は。
「またご冗談を。気持ち悪い」
と、絵を見ると、さっきと違う絵になっている気がするので、怖くなって私は席を立ち、振り返らずさっさと階下へ向かった。
「あらお客様、もうお帰りですか?」
いつのまにかお手伝いさんは階下にいた。
「絵の中に誰かが映るなんて、そんな不思議なこと、あるはずもないってお顔ですね」
「そう思っていました・・・わたくしも」
いったい何を言っているのだろうこの人は。嫌な汗がすごい。
「でも、わたくしも、ウン百年とここにいれば、世の中のあれやこれやを、少しは学んだような気がしますのよ」
はあ、だめだ、もう帰ろう!屋敷を出よう!
「ほら・・・現に、あなた様もわたくしの姿が・・・空気に溶けるように・・・見えて・・・る・・・」
最後に、微かに笑ってその幽霊は消えたのです。とても寂しい、冷たい顔を残して。
私の記憶もそこで終わりです。そのあとはどうやって自宅へ戻ったかも覚えていません。
アズランの湿原3910-5のお屋敷は、今も買い手がないそうです。
おそまつさまでした。
150全部置いた!
壁が少し寂しいな〜なんて遊んでたのです。で、昔もらったバレンタインの壁掛け絵画をせっかくだから使ってみよ〜と思い置いてくうちに、重ねていろんなものが見えちゃう風の遊びを思いついたのでやってみました。ちょっとがびがびしますけど、本当に見る位置により内容が変わります。
あとは適当にお話を捏造しまして笑。
ご訪問とスラチャはとっても喜びます(´∀`=)!