『揃えたはずの宝物箱』
ユウトは深夜の自室で、パソコンの前に座っていた。モニターにはドラゴンクエスト10の画面が映り、彼の分身である冒険者が広いフィールドの中央に立っている。そこには、彼が長い時間をかけて集めた課金アイテムの家具が散りばめられていた。
「これ全部、俺が本当に好きなものばかりなんだ……」
そうつぶやきながら、彼は画面左下のメニューを開く。新しい家具を追加しようとした瞬間、いつものエラーメッセージが表示された。
「設置数が上限に達しています。」
ユウトは深いため息をついた。これまで何十万円もかけて集めたアイテムたち。しかし、ゲームの設置制限が厳しくて、彼が心から飾りたいと思う全ては置けなかったのだ。
「これじゃ、宝物箱に鍵をかけて隠してるみたいだよ……」
画面の中の冒険者は、彼の意識を反映するかのように、ぽつんと家具の前に立ち尽くしている。彼は何度も家具を置き直し、どれを残してどれを諦めるか選び抜いてきた。でも、それでも足りなかった。
「課金した意味がないってわけじゃない。どれも愛着がある。だけど……それを全部見せられないのは悲しい。」
ユウトは小さく目を伏せた。リアルの世界でも、彼は無口で人付き合いが苦手なタイプだった。ゲームの中で自分らしさを表現しようと、課金にお金をつぎ込んだ。でも、運営のルールは彼の楽しみを制限した。
「もっと広い部屋があれば、全部飾れるのに……」
そんな願いを胸に秘め、ユウトはまた家具の配置を見直し始めた。デジタルの世界での自分の「城」は狭く、彼の夢もまた、どこか閉じ込められているように感じた。
だが、彼はあきらめなかった。いつか必ず、全部の宝物を見せられる日が来ることを信じて。
「これは、まだ途中の物語なんだ。」
そう呟き、彼は再び冒険の旅へと足を踏み出した。