『マイタウンの11の窓』
お魚さんのリリィは、冒険の疲れを癒すようにマイタウンのポストに立ち寄った。そこには、いつも何かしらの「お知らせ」が届いている。今日はフレンドのカナさんからの手紙だった。
「DQ11家具、全員分揃ったよー!よかったら遊びに来てね♪」
思わずリリィの目が輝く。あの人気コラボの家具は、どれも高価で手に入りづらい。全員分なんて夢のまた夢――その“夢”を、フレのカナさんは現実にしていた。
「これは行くしかないでしょ!」
すぐにリリィはマイタウン転送の呪文を唱え、カナさんの「しんぴのたみタウン」へと飛んだ。
まず目に飛び込んできたのは、澄み渡る青空と広い花畑。その中央には白い石造りの広場があり、11体の等身大キャラクター家具が円形に並んでいた。まるで一人ひとりが、何かを語りかけてくるような配置だった。
リリィは最初に、広場の西側に設けられた木造の小屋に足を運んだ。
セーニャの部屋
静謐なハープの音が流れるような、ラベンダーの香りのする空間。緑と白の布地があしらわれ、聖なる祈りを捧げる小さな祭壇があった。セーニャ家具の周囲には、やわらかな光の照明とアロマポット。
「癒される……こういうのが“清らか”っていうのね」
リリィはうっとりとため息を漏らした。
ベロニカの部屋
お隣にあるのは、赤と金を基調にした元気いっぱいの部屋。魔法の本や爆発跡を模したラグ、小さなぬいぐるみが所狭しと並ぶ。
「こっちは賑やかね、ベロニカらしい!」
部屋の隅にある黒板には、「魔法禁止!」と子供っぽい字で書かれていた。
シルビアの部屋
鮮やかなピンクと紫、壁にバラの模様。グランドステージのような照明とミラーボール。家具の中央には、シルビアがにっこり微笑んでいる。
「愛と笑いの芸人、ここに爆誕だね!」
リリィは思わず一緒にポーズを決めてスクショを撮った。
カミュの部屋
黒と青のクールな配色。小ぶりの鍛冶台や古びた地図が散らばっている。床には革製のソファ、窓辺にはひっそりと開いた本。
「無口で頼れる兄貴、って感じ。ここだけ急に夜の匂いがするなあ」
リリィはそっとカミュ家具に近づいて、彼の隣に腰を下ろした。
ロウの部屋
赤絨毯と漢方の棚。古風な掛け軸に「心技体」と書かれている。ちゃぶ台の上には、湯気のたつ薬草茶。
「わぁ……本当に、おじいちゃんの家みたい」
リリィはしばらく、茶の香りに癒やされていた。
マルティナの部屋
黒と金のセクシーな色合いに、格闘技のトロフィーやポスター。壁際に豪華なドレッサーがあり、香水瓶がずらりと並ぶ。
「強さと美しさを兼ね備えた人……憧れちゃうな」
鏡越しに自分の小さな姿を見て、リリィは少しだけ背筋を伸ばした。
グレイグの部屋
ここだけ異様に整然としていた。剣と盾が壁に掛けられ、床には足音一つ響かないほどに磨き上げられている。グレイグ家具のそばには、「規律第一」の看板。
「……怖いけど、安心感あるね」
リリィは部屋にそっと一礼した。
主人公(イレブン)の部屋
シンプルで優しい木の香り。畑仕事の道具、スライムのぬいぐるみ、小さな日記帳。
「こういう人がリーダーだったから、みんなが集まったんだなぁ」
リリィは日記帳を開く仕草を真似て、心の中で「ありがとう」と呟いた。
リリィは残りの部屋も丁寧にまわった。どの家具も、どのインテリアも、どれ一つとして同じものはなかった。
そして広場の中央に戻った時、ふと視界にカナさんのキャラが現れた。
「来てくれてありがとう、リリィちゃん」
「ううん、むしろありがとうって言いたいのは私のほう。これ、本当に全部カナさんが考えたの?」
「うん。DQ11ってさ、ストーリーもキャラもすごく好きだったから、それぞれの部屋も、その人の“心”を思い出しながら作ったの」
「全部、違う命が宿ってたよ……私、ちょっと泣きそうだった」
カナさんは照れくさそうに笑ったあと、広場の真ん中でリリィに向かって手を振った。
「このゲームの家具って、置ける数には限りがあるけど――思い出は、制限されないんだよ」
リリィは、深くうなずいた。
「ほんと、それだね。ありがとう、見せてくれて」
夜の帳が静かに下りて、マイタウンの灯りが一つずつ点り始めた。DQ11のキャラクターたちは、それぞれの部屋で静かに微笑んでいた。
まるで、またいつか物語が始まるのを待っているように――。