みるくの冒険日誌:ジュレットの町にて(1000文字)
日曜の午後。潮の香りに誘われて、みるくは久しぶりにジュレットの町へ足を踏み入れた。かつて、ここは旅の者たちが集い、見知らぬ誰かとパーティを組んだり、しばし立ち話に花を咲かせたりした出会いの聖地だった。
「……静かだね」
透き通るような青い空の下、砂浜には足跡ひとつない。海辺のベンチには誰も座っておらず、酒場の扉は開け放たれたまま、人影もまばら。にぎわっていた頃は、日曜になるとこの町は大盛況だった。魔法使いや戦士たちの呼びかけが飛び交い、転職案内所の前では人だかりができていた。
だが今、その面影は、波の音の向こうに溶けている。
「ねぇ、覚えてる? あのとき一緒に魚釣った人……。名前、なんだったかな」
誰にともなくつぶやく。みるくの背中には、旅の証が詰まったリュック。もう何度目かの大陸横断を経て、みるくも立派な冒険者になっていた。あの頃のように、初対面の誰かに話しかけることはもうない。それは少し、大人になった証拠で、だけど、ちょっとだけ寂しいことだった。
ふと、波打ち際に小さな泡がはじけ、そこから一羽のカモメが飛び立った。白い羽根が風に舞い、空へと消えていく。
「うん、いい場所だったな。今もね」
ジュレットの町は変わらず美しかった。けれど、そこに集う人々の時間は、確かに進んでいた。かつてのメッカは、今や記憶の中の広場。けれどそれでも、みるくはこの町を好きだった。
「また、誰かに出会えるといいな。ここで、また」
そう言って、彼女は海の方へと歩き出す。たとえ人がいなくても、町の記憶は風とともに息づいている。今日もまた、新しい冒険の1ページが、静かに綴られようとしていた。
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