ベルサイユの残響
「トイレはドラクエの世界観にはない」。
その言葉が、耳にこびりついて離れない。昨日の『超ドラゴンクエストXTV』の発言だ。しかし、もし本当にそうなら、ドラクエの世界は、かのマリー・アントワネットが過ごしたベルサイユ宮殿の時代と同じなのか?
頭の中に、鮮烈な情景が浮かび上がる。絢爛豪華な宮殿の回廊。だが、その華やかさの裏では、排泄物が窓から投げ捨てられ、庭には異臭が漂う。人々は公然と用を足し、その不潔さが疫病の温床となる。そんな歴史的事実が、ドラクエの世界に重なる。
私は目をつむる。エテーネの村の清潔な石畳も、ヴェリナードのきらびやかな大理石の床も、あの発言を境に、別の意味を帯び始める。宿屋の地下には、実は巨大な汚物溜めがあるのだろうか? 城下町の片隅からは、隠しきれない悪臭が漂っているのだろうか?
勇者が倒した魔物の死骸が放置され、腐敗臭を放つのはまだ理解できる。だが、人々の生活の根幹に関わる「排泄」という行為が、世界観から切り離されているとすれば、それはあまりにも非現実的ではないか。
もし、ドラクエの世界に衛生という概念が希薄で、中世ヨーロッパのように疫病が蔓延し、異臭が満ちているとしたら。それは、私たちが愛する、あの希望に満ちた冒険の世界とは、かけ離れたものに思える。
まさか、私たちがこれまで見てきたドラクエの世界は、臭気と病に満ちた、隠された真実の上に成り立っていたのだろうか? その可能性に、私は軽いめまいを覚えた。私の冒険は、この世界観の矛盾に、どう向き合えばいいのだろう。この疑問は、まるで新たな強敵のように、私の心に立ちはだかっていた。