聖湖ゼニートのガゼボ
湖面から吹き上がる風が、蔦の葉をそよがせる。ガゼボの木材は陽に焼け、深い飴色を帯び、手を触れると温もりが指先に移った。遠くでは水鳥が羽音を立て、時折、水面がきらりと光る。
足元には柔らかな草が広がり、そこに混じる野花の甘い香りが漂う。蔦はまるで古の精霊が紡いだ糸のように、柱を伝い、屋根の影を深くしている。
中に立つと、周囲の音が少し遠くなる。波の音、木々のざわめき、どれもが心の奥に静けさを運んでくれる。手にしたルアーを一度見下ろし、私は釣り糸を湖に垂らす。
水面に広がる輪紋を見つめながら、思う。——ここは、戦いも喧騒も忘れられる、私だけの場所だ。