黄金色の吐息
「……あ」
薄暗い部屋の中、モニターの淡い光がみるくの瞳を青白く照らしている。カチリ、という最後の一撃——マウスのクリック音が、静寂に波紋を広げた。
画面に並んだ数字。コンマの位置を右から数える。一、十、百、千……。指先が震え、最後の一桁をなぞったとき、心臓が跳ね上がるような衝動が胸の奥から突き上げてきた。
**100,104,498 G**
「やった……本当に、届いたんだ」
唇から漏れた声は、自分でも驚くほどかすれていた。
喉の奥が熱くなり、こみ上げてくる感情が視界をじわりと滲ませる。これまで積み上げてきた時間の重みが、この数字には詰まっている。
ふわりと、部屋に漂う淹れたての珈琲の香りが鼻腔をくすぐった。少し苦味の強い、いつもの香り。だが、今この瞬間に嗅ぐそれは、まるで最高級の祝杯のように芳醇に感じられる。
みるくは椅子の背もたれに深く体を預けた。使い古された椅子の、ギィという軋み。指先に残るキーボードの冷たい感触。窓の外からは、遠くを走る車の走行音が微かに聞こえる。日常の音のはずなのに、今はすべてが祝福の調べのように耳に届いた。
一億という大台。
それは単なるデータの羅列ではない。何度も心が折れそうになった夜、黙々と作業を続けた指の痛み、そして目標を追いかけ続けた情熱の結晶だ。
胸の鼓動が、トクン、トクンと規則正しく刻まれる。
手のひらにじんわりと汗が滲む。この熱こそが、自分が今、この快挙を成し遂げたという確かな証拠だった。
「ありがとう」
誰にともなく、みるくは呟いた。自分を支えてくれた環境、そして何より、今日まで歩みを止めなかった自分自身に対して。
頬を撫でる冷房の風が心地いい。
暗い部屋の中で、モニターに映る黄金色の数字だけが、みるくの未来を明るく照らし続けていた。
所持金+銀行
: 100,104,498 G