アストルティアの花と風景を紹介する記事を書いています。今回は、レンダーシア(内海)編として、ラゼアの風穴についての記事を書いていきます。
ラゼアの風穴は、レンダーシアの大地に巨大な壺を半分ほど埋めたような地形をしており、陸路での進入ができない場所です。
私は飛龍の翼を借りて、初めてこの地に足を踏み入れました。
壺の縁のような外周から、底に降りてみると…、
まさしく陸の孤島のような場所であるだけに、外界とはかなり異なる植物が多く見られます。
生息する魔物達のうち、太古のヌシのような古いタイプの魔物も多く生き残っていることから、この場所は太古の時代に近い環境が永らく保たれて来た場所であると推測されます。
水分に乏しい土地柄ゆえか、見られる植物は多くがサボテンであったり、幹に水分を蓄えられる塊茎植物らしい樹木でした。サボテン2種と、大型の葉を広げる塊茎植物、梢一杯に紫色のカラーリーフか花をつけた塊茎植物は、この地に固有の植物であるようです。
秘境と言えそうなこの場所ですが、しかし明らかに人の手が加えられている様子が随所に見られます。
外周から底に降りる道も、斜面の他に隧道もあり、内部の岩山には橋までかけられています。
進入が容易ではないだけに、隠れ家としてはお誂え向きの場所だったということでしょう。
私より先に来た人物は、どうやってこの地に降り立ったのでしょう。
もしかしたら、と思わせる鍵は、植物に残されていました。
写真のサボテンと塊茎植物の間に生えている、小さな桃色の花が集まって穂のような形になっている植物です。
花の色は少しこちらのものが濃いようですが、全体の姿形はプクランド大陸産の花と良く似ています。オルフェア地方や住宅村、そしてキラキラ大風車塔エリアにも見られる花です。
もしかしたら、以前にこの地に来た人物は、風車塔で気球を借りて飛んできたのかもしれない。
知らず知らず、風車の丘から花の種を伴って…。
そしてそれから、どれほど時が経ったのでしょう。
風車の丘からついてきたかも知れない花が、姿を変えはじめているのだとしたら、かなり世代を重ねていることになります。
そして何より、隠れ家の通路にかけられた橋、雨除けの庇等は、既にかなり朽ちていて、隠れ家の主の不在が長いことを告げています。
そもそも、隠れ家に厳重に保管されている宝の隠し場所へ至る鍵が、イッショウ老師に託されたのが、既に10年も前だったというのです。
陸の孤島のラゼアの風穴、その更に内側にある岩屋の中で、厳重に守られていたもの。
それは、エテーネ村が滅びたあの日、同時に失われた筈のテンスの花でした。
太古の環境が残されていたこの地に研究室を設え、数十年の長きにわたり研究を続けた結果、私の兄弟はついにテンスの花を復活させていたのです。
のみならず、兄弟は本来のテンスの花よりも強い力を持った輝くテンスの花までも完成させていました。
カメさまの姿になっているペガサスの復活には、この輝くテンスの花が必要だったのです。
私にテンスの花を託し、見事に使命を果たした私の兄弟の足跡は、残念ながら、ここでまた途切れてしまいました。
残されていた手紙には、何かに追われているかのような切迫感、同時に私への思いが溢れていました。
…この時点で、既に数十年。
最初の数年こそリリオル嬢と共に過ごしたとはいえ、その後はおそらく1人だった筈なのです。
あの日あの時、1人にしないでと、泣きながら叫ぶ兄弟の姿が脳裏に甦ってきます。
それなのに、こんなにも長い間、1人にしてしまったかと思えば、済まない気持ちで胸が痛みます。
…しかし、まさか、その「長い間」が、実際にはどれほど壮絶な長さであったのか…、この時の私には知る由もありませんでした。
次回は、魔幻宮殿についての記事を書く予定です。