アストルティアの花と風景を紹介する連載記事を書いています。ストーリーの進行に沿って、初めて出会う花や風景についての記事を書いていきます。
今回からは、ナドラガンド・氷の領界編として、とこしえの氷原、イーサの村についての記事を書いていきます。
奈落の門から踏み込んだ異界、ナドラガンドは、如何なる理由でか5つの領界に分断されており、住民である竜族ですら互いに行き来も儘ならない状態でした。「邪悪なる意志」なる謎の存在による様々な災いに苦しめられているという竜族の救済を目的として活動するナドラガ教団と協力して、分断された領界を繋ぎ、ナドラガンドのどこかにいる筈の神の器達を探すことになった私は、最初に降り立った炎の領界と隣り合う氷の領界に渡る道を開くことに成功しました。
先行して氷の領界を調査していた神官トビアスが強敵と遭遇し、重傷を追って戻って来たという知らせを受け、私はエステラを伴って氷の領界に向かうことになりました。
領界同士を繋ぐ光の通路を抜けた私を出迎えたのは、まさしく氷の領界の名にふさわしい光景でした。見渡す限り氷ばかりの大地は、思いのほか起伏に富んだ地形を見せています。そして、こんな凍てついた世界にも、美しい植物がありました。
写真中央手前には、雪の結晶のような形の花をつけたアイスブルーの草、その奥にはピンク色の穂のような花房をつけた草があります。特に手前の花は、雪か氷の結晶そのもののようでもあり、いかにも氷の世界にふさわしいと思わせる姿をしています。
更に進むと、樹木らしきものも見つかります。氷柱のような幹の上には空を覆う極光を閉じ込めたような輝きを放つ球体が幾つも付いていて、これが果実なのか何なのかも判然としません。
美しいけれど不可解…、これが、初めて氷の領界に来た時の私の印象でした。
…そして、不可解でもあり、それ以上に戦慄を覚えたものは、円盤の遺跡に降り立ってすぐから否応なしに目に入ってくる巨大な骨でした。
凍てついた世界の端から端まで、まさしく背骨のように貫いているこの骨の正体は、容易く想像がつきました。
炎の領界にあるのはナドラガ神の頭だと言います。ならばその次に続く氷の領界にあるのはナドラガ神の体の部分と解釈せざるを得ません。
…頭をなくした巨大な神の体。それがそのままこの世界となっているのだとしたら。
等と思い巡らせた私は、心底震え上がってしまい、自分の想像を後悔さえしました。…探索の為には、そのまさに竜神の背骨らしきものの上を歩かねばならない場所もあり、お世辞にも気持ちの良いものではなかったのです。
それでも、それでも、探したい人達がいるから。
この領界にも、災いに苦しめられている人達が居るというから。
震える足を励ますようにして、先発隊の報告にあったイーサの村という集落にたどり着いたのですが…
深刻な食料不足で危機に陥っているという村の住民達は、予想に反して何やら受かれている様子ですらありあました。
明らかに異界の出自と判る私を見てさえ、さほど驚きもせず嫌悪感や拒否感も示す様子もないのです。
炎の領界での、最初の頃の扱いを思い返すと、いささか拍子抜けしてしまう程でした。
…が、すぐに理由は判りました。
村の伝承によれば、もしもの危機には「緑の者」なる救い主が現れる、というのです。
そして、まさしく今、危機に陥っているイーサの村に「緑色の肌を持つ人物」が出現したのだそう。…つまり、ドワーフ族の神の器、ダストンの出現により、村人達は間もなく救済されるものと思って歓喜に沸いていたのでした。
次回は、恵みの木、アヴィーロ遺跡、カーレルの氷雪洞についての記事を書く予定です。