アストルティアの花と風景を紹介する連載記事を書いています。ストーリーに沿って、初めて出会う花や風景についての記事を書いていきます。
今回は、ナドラガンド・氷の領界編として、恵みの木、アヴィーロ遺跡についての記事を書いていきます。
竜族が暮らす世界であるナドラガンドは、長らく5つの領界に分断され、それぞれの領界に住まう竜族同士すらも往き来が出来ない状態でした。
アストルティアから連れ去られた神の器達を探してナドラガンドに踏み込んだ私は、ナドラガンド全域を捜索する為にナドラガ教団と手を組むことになり、最初に降り立った炎の領界と、隣接する氷の領界を繋ぐことに成功しました。
かくして氷の領界に足を踏み入れたところ、なんと早速探し人の1人、ダストンに遭遇したのでした。
ダストンを見つけた現場は、氷の領界唯一の集落であるイーサの村でした。
イーサの村は食料難による存亡の危機を迎えているところでした。しかし、村の危機にはそれを救う者が現れるという伝承があり、村長によれば、どうやらそれがダストンその人であると言うのです。
右も左もわからない異界に飛び込んでしまった挙げ句に救世主と崇められ、下にも置かぬ扱いを受けたダストン自身は大層困惑し迷惑がっていたのですが、村の危機を救う「緑の者」であると信じている村人達が彼を解放する筈もないのでした。
イーサの村は食料危機に見舞われていたのですが、そもそも氷ばかりのこの世界で、人々はどうやって暮らしを立てていたのでしょう。
聞けば村から少し離れた場所に、「恵みの木」と呼ばれる不思議な植物が生えていて、村人達はその木の実を食料にしているということでした。
「恵みの木」は巨大なつる性植物で、梢には一抱え程もある果実を実らせています。その姿は、氷の領界の他の場所に生える植物とは明らかに様子が異なり、雪や氷のような意匠は持たず、どちらかと言うとアストルティアの植物に近い姿をしています。
葉のようなものが見当たらず、幹(蔓)から直接小さな花をつけている巨大な緑の蔓を見て、私は以前訪れたドラクロン山地の蔓植物を思い出しました。
あちらの蔓は果実をつけてはいませんでしたが、急峻な山地を登攀するのにずいぶん助けになってくれました。
あれと同じものではなくとも似た仲間の蔓植物が、こちらの世界では、果実をつけて人々の助けになっているのかもしれない、そんな風に思えたのです。
不思議なことに、恵みの木がある一角だけは、氷に覆われず、見慣れたアストルティアの花々までもが咲いているのです。
そして、ここに咲く花の殆どが、プクランド大陸に見られる花なのです。
周囲の世界と明らかに様子が異なる…この場所が存在する理由として、ここに咲く花から読み解くとしたら…それは、花の民の種族神による慈悲、ではないか。一連の騒動が収束した後、私はそう思ったのです。
…村を襲った食料危機の原因は、この恵みの木が突如として凍りついてしまい、果実を収穫出来なくなってしまったことでした。
恵みの木を元に戻す力を持つ「緑の者」が、「極光の魔鉱石」というものを手にして祈れば良いとのことですが、極光の魔鉱石があるアヴィーロ遺跡には凶悪な魔物がおり、村人達では歯が立たないとのこと。
村を救い、また、囚われ人同然のダストンを解放する為にも、私が鉱石を採ってくることになりました。
アヴィーロ遺跡は氷の領界の端、龍神の尻尾の骨が巻きついて捧げ持っている燭台のような形の小高い場所にあります。
遺跡というだけあり、現代のイーサの村とはだいぶ異なる意匠の建物が遺されています。
一体、どれほど古い時代のものなのか、一見してむしろ現代の村より高度な建築技術で作られているようなのに、どうして放棄されたのか…、この時の私には知る由もありませんでした。
遺跡の最奥にある広間の一隅に、目指す極光の魔鉱石の塊がありました。この場所には相当に手強い魔物が多数巣食っており、退治にはかなり骨が折れました。何とか鉱石を持ち帰ることはできましたが、鉱石の採取を阻み、恵みの木復活を妨げる何者かの意図を感じずにはいられませんでした。
次回は、カーレルの氷洞、白銀の流氷野、氷晶の聖塔についての記事を書く予定日です。