アストルティアの花と風景を紹介する連載記事を書いています。ストーリーに沿って、初めて出会う植物や風景を紹介していきます。
今回は、ナドラガンド・闇の領界編として、影の谷、ナドラガ神のほこら闇、楽園についての記事を書いていきます。
アストルティアから連れ去られた神の器達を探すため、私は竜族の世界であるナドラガンドに渡りました。ナドラガンドは5つの領界に分断されており、人探しのためには領界間を行き先できるようにしなければなりません。
領界分断の解消は、竜族の救済を志すナドラガ教団にとっても同じく悲願だったため、協力関係を結んで旅をすることになりました。
それぞれの領界は全く異なる様相を呈する世界で、到達した順に炎、氷、闇と続きます。
氷の領界ではダストンと再会し、続いて3つ目の闇の領界ではマイユと再会できました。しかし、闇の領界は闇ばかりか毒で満ちている世界でもあり、マイユは毒に冒され倒れてしまっていたのです。
闇の領界の毒を癒す唯一の手段、それは月の光。
しかし、あろうことかその月までもが失われてしまう事態に陥ります。
ならば、月を探し、再び浮かべればよい。
あまりに突飛なそんな台詞を、至って真面目に口にしたのは、マイユが毒から守った闇の領界の少年、サジェでした。
闇の領界には、楽園と呼ばれる場所があり、月はおそらくそこにあるとサジェは言います。
しかし、その「楽園」は、村の伝承ではある時悪魔が住み着いてしまい、かつて村人の先祖達は命からがら闇の辺獄まで逃れ、現在のカーラモーラ村を棲みかとしたのだとか。
以来、楽園に至る扉は厳重に封じられ、楽園は禁足地となっているのだそうです。
禁を破ってでも楽園を目指すと宣言するサジェに、意外にも村長は理解を示します。
村長は楽園への扉の鍵のありかを教え、その道を開いてくれたのでした。
鍵のありかはナドラガ神のほこら、そこに至るには、影の谷と呼ばれる危険な場所を通って行かなければなりませんでした。
影の谷は、カーラモーラ村の地下通路から、更に下層に降りた先に広がっている、闇の領界の最下層でした。
闇の辺獄から見下ろした時には靄に包まれて詳細が解りませんでしたが、降り立ってみれば、そこは上層よりも更に毒に満ちているようでした。
毒の沼があちこちにあり、見るからに毒々しい色合いのキノコ、胞子を蓄えた発光植物が生えています。
こんな危険な場所を、もしも私が護衛を引き受けなければ、サジェは1人で踏破するつもりだったのでしょうか。
ナドラガ神のほこらに至る道筋に施されている封印を解くため、影の谷をともに行きつ戻りつしながら、私は驚嘆を通り越して正気を疑う思いでした。
実はサジェにはこんなにも無茶をせざるを得ない、彼なりの事情があったのですが…この時にはまだ、口には出せないようでした。
大変な思いをして影の谷を抜け、封印を解いて辿り着いたナドラガ神のほこら。
闇の領界のほこらは、竜神の掌の上に祭壇が築かれているような意匠になっていました。
…というよりも、これまで訪れた2つの領界のほこら同様、竜神の体の一部そのもの、つまりは本当に竜神の掌が祀られているのだろうな、と思いました。
あの祭壇の前に立つのは、竜神の掌に乗るようなものかと思うと、やはり控えめに言っても気持ちのよいものではありません。
しかし、一方で、それでもこの場に満ちる神秘的な気配には、息をのむ思いでした。
サジェは村の伝承を手がかりに、このほこらに隠されていた楽園への扉の鍵を見つけ出します。
いよいよ、あの楽園への扉を開けて、この先に進むことにしました。
例の扉の先にあったのは、なんとエレベーターでした。
床以外総硝子張りのエレベーターに乗って、私とサジェは闇の辺獄を見下ろしながらどんどん上昇していきます。
闇の辺獄とその上部の境目はどうなっているのか、闇の領界の構造の秘密をこの目で直接見る絶好の機会かと思ったのですが…、残念ながら、途中で月を壊した魔物の手先に襲撃され、これを撃退するうちに、いつしかエレベーターは終着点に到達していました。
ここ暫く、ほぼ真っ暗な中を旅してきた私にも、そして、もちろん闇の辺獄育ちのサジェにも、この先の光景は衝撃だったのは間違いありません。
そこは、明るく、色鮮やかで、全く毒がないばかりか、自然由来の構造物すらない、人工の構造物ばかりで出来上がっている世界だったのです。
これが、「楽園」…。
俄には、色々と呑み込みきれない様子で、あたりを調べ始めるサジェ。
サジェには完全に新規な意匠に見えたでしょうが、一方で。
私には、アストルティアの工匠の国ドルワームに通じる何かが感じられたのでした。
次回は、引き続き楽園、冥闇の聖塔、再びカーラモーラ村について記載する予定です。