目覚めし冒険者の広場-ドラゴンクエストXプレイヤー専用サイト

紡ぎし緑の者

アル

[アル]

キャラID
: CS433-198
種 族
: ドワーフ
性 別
: 女
職 業
: 旅芸人
レベル
: 140

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アルの冒険日誌

2026-04-24 22:10:51.0 テーマ:写真活動

『タイトルは、きみにしようか』



 春になっていた。




 去年の自分が書いたものを読み返すと、恥ずかしいより先に、懐かしかった。




 うまくない。本当にうまくない。




 でも、あの頃の自分にしか書けない痛みが、
  ちゃんとそこにあった。




 下手なまま、それでも誠実だった。




 少女はファイルを閉じて、新しいページを開いた。



投稿サイトのメッセージ欄に、見慣れない名前があった




 アカウント登録したばかりらしく、プロフィールには何も書かれていない。




 送られてきた文章は短くて、ひどく不格好だった。



 「小説を書きたいんですが、どうすればうまくなれますか」




 少女は少しの間、画面を見つめた。




 どうすれば、うまくなれるか。




 一年前の自分が誰かに聞いていたら、なんと答えてもらいたかっただろう。




 才能があると言ってほしかったか。




 書き続ければ報われると言ってほしかったか。




 たぶん、どちらでもなかった。




 ただ、書いていることを、知っていてほしかった。



 この暗い部屋で、誰にも読まれないまま、それでも打ち続けているということを。




 少女は返信を書き始めた。




 うまくなる方法は、私にはわかりません。




 私もまだ、うまくないので。




 ただ一つだけ、去年気づいたことがあります。




 書き続けることが才能なのかもしれない、って。




 やめられない体質のことを、才能と呼ぶのかもしれない、って。




 あなたが「書きたい」と思った瞬間、もうその資格はあると思います。




 タイトルなんて、あとでいい。




 まず、書いてみてください。




 送信してから、少し照れた。




 偉そうだったかな、と思った。




 私だって全然うまくないのに、と思った。




 でも、後悔はしなかった。




 誰かに言葉を渡すというのは、こういう感じなのか  と思った。




 受け取るのとは、また違う温かさがあった。




 その夜、少女は新しい話を書いた。

主人公は、書くことをあきらめかけている少女だった



 自分のことを書いているようで、でも自分ではない誰かのことを書いていた。




 あの頃の自分かもしれない。




 メッセージを送ってきた、名前も知らない誰かかもしれない。




 もしくは、今夜どこかの暗い部屋で、誰にも言えずにいる、まだ見ぬ誰かかもしれない。




 文字を打ちながら、少女は思った。




 私はずっと、読まれたかっただけだと思っていた。



 でも本当は、誰かの隣に行きたかったのかもしれない




 届けたかったのではなく、そこにいたかった。




 孤独の隣に、そっと座っていたかった。




 タイトルの欄に、カーソルが点滅している。




 今夜は、迷わなかった。




 少女は静かに、キーボードを打った。




 書くことをあきらめかけているすべての人へ。




 うまくなくていい。




 遅くてもいい。




 誰にも読まれなくてもいい。




 あなたが書いた言葉は、いつかきっと、誰かの体温になる。




 だから、タイトルをつけよう。




 あなたの物語に、あなただけの名前を。




 ファイルの保存名を、少女は書き換えた。




 『タイトルは、きみにしようか』




 送信ボタンを押したあと、静かな部屋に春の夜気が流れた。




 世界は相変わらず、何も変わらない。




 通知も、すぐには鳴らない。




 それでも少女は、確かに思った。




 もう一人じゃない、と。




 書くことは孤独だけれど、孤独だけじゃない、と。



 ペンを持つ手が、少しだけ温かかった。
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