『結晶と私の出会い』その1
▼私がまだ魚ではなかった頃
今となっては私と言えば結晶金策と言われるほどに、結晶と私は切っても切れない関係となっている。
しかし勿論、はじめからそうだった訳ではなく、物事には始まりがあるもので…。
この世界にやって来て1ヵ月程度だっただろうか。
私は一つの壁にぶち当たっていた。
そう、金策問題である。
装備は良いものを買おうとすると、どれも数百という多額のゴールドを要求される。今と違いゼルメアも無く、多少の盗みと日替わり討伐のみで稼いでいた当時の私には、おいそれと手を出せる金額ではなかった。
「何か良い方法は無いものか…」
ストーリーを全て終えるまで攻略サイトの類いは絶対に見ないと心に決めていた私の情報源は、他の冒険者とのコミュニケーションのみであったため、知識も何もかもが不足していたのだ。
ふむ、まあ今も多少その傾向にあるのだが…。
さておき、まず私の出した結論は「諦める」であった。きっとストーリーを進めれば何かしら見えてくるのではないかなどと、言い訳がましく…その実、攻略サイトを閲覧する条件クリアの為にストーリー攻略にのみ没頭した。
苦戦しながらもなんとかストーリーを進め、Ver2も終盤に差し掛かった頃酷く痛感する。実力が圧倒的に不足している。どうしてもボスに勝てないのだ…。
自分ルールを決して破りたくない私は、絶望のドン底に叩きつけられた様な気分だった。これでは手詰まりではないか。
今思えばパッシブスキルも不足している状態でサポートの性能も気にせずに雇っていたのが原因だったとも思うが。ともあれ、当時の私はそんなことにすら気がつけないほどに無知だったのである。
「一先ずストーリーは諦めよう」
ここから怒涛の迷走時代へと突入するのであった…。
『結晶と私の出会い』その1 終