「奥様、手紙が届きました。
あら、何の写真を見ているんですか?」

これはね、あの子が産まれてすぐに撮った写真なの。 あの子は世界中を冒険していてなかなか帰ってこないでしょ。
だからこうやってあの子の写真を見返して、思い出に浸っているの。

これは、アストルティア幼稚園の卒園式で撮った時の写真よ。
「とても愛らしい写真ですね。」
そうね。 見た目とは裏腹にすごくやんちゃでね。
在園中は先生方には沢山苦労させちゃったわ。
木の枝を拾うと所構わずギガスラッシュをするのよ。範囲技は危ないから、はやぶさ斬りにしなさいって先生からよく注意されてたわね。
グランゼドーラ王国へアストルティア学園の入学手続きの後、お買い物をしていた時だったかしら...あの子ったら勇者の剣が欲しいと駄々をこねたの。
また今度ねって言っても聞かなくて・・・
その場を動こうとしないから手を引っ張ろうとしたんだけど、びくともしないのよ。
たまたま賢者ルシェンダ様が通りかかってね、ズッシード?とかいう呪文を使っているとか。
幼いながらも呪文を使える事を褒めて頂いて。
嬉しくてつい幼稚園児の頃のお話もしちゃったの。
ルシェンダ様は驚いた顔をして仰ったわ。
この子は学園ではなく冒険者の道もあると。
親としては子に危険な目にあって欲しくないから、
冒険者じゃなく進学の道を勧めたわ。
パドレはちょっと残念そうにしていたけれど。
入学日当日、私達にとって忘れられない事件が起きたの。
快晴だった空が急に暗雲に覆われたの。
騎士団も慌ただしくしていたわ。
魔王ネルゲルが蘇ったとかなんとか・・。
空に船らしきものが浮いていたわね。
あの子、船を見るなり、あれに乗りたいと言って、騎士団たちの制止も振り切るスピードで走っていくの。
私は頭が真っ白になったわ。
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三日三晩探しても見つからない。
涙も、名前を呼ぶ声も枯れた。
魔物に食べられたのでは・・・
やがて暗雲が晴れ、船は墜ちたらしい。
町中が歓喜の声で賑わっていたが、私達は深い悲しみに暮れていたわ。
あの子はもう戻らない。
そんな中、勇者アンルシア姫が訪ねて来たわ。
隣にはニッコリと笑うあの子の姿が。
私はもちりんに強くビンタをし、強く抱きしめた。
心配したんだから・・・。
アンルシア姫は事の流れを説明してくれたわ。
ネルゲルを討伐すべく天馬に乗り、羽ばたいた時に子供が飛び乗って来た。
魔物の群れが押し寄せてくる中、降ろすわけには行かずネルゲルが待つレイダメテスへ連れて行く事になったと。
シオンに抱っこされながら、ネルゲルとアンルシア姫の戦いを眺めていた。
アンルシア姫が優勢だったがネルゲルは悪霊の神々を召喚し、徐々に形勢は傾く。
追い詰められたアンルシア姫は防戦一方。
猛攻をしかける悪霊の神々に火球がぶつかる。
火球-メラゾーマが子供の握った杖から放たれる。
次々と消滅する魔物たち。
ネルゲルは子供の方に目をやる。
その隙をついたアンルシア姫がネルゲルを一閃。
魔王は討ち果てた。
国を救ったアンルシア姫と、勇者の危機を救ったもちりん。
勇者と勇者の盟友が誕生した。
・・・
あの子は冒険者として生きる事を選択した日だったわ。
今でも元気にしているかしら。
長い話に付き合わせてしまったわね。
手紙が来ているんだって?
「そうでした。奥様、坊ちゃまからのお手紙です。」

手紙には、イメチェンした。と書かれていた。
「坊ちゃま!?」
ふふ、変わらないわね。
「奥様!?」
元気そうで何よりだわ。