?「…ええ。また偽善クズがいましたよ」
暗闇の中、スーツ姿のオーガがスカウターで通話を行っている。
?「…安心してください、…………様、殺しは致しません。」
サザンカ組、それはガートラント中心のヤクザの集まりであり、金の貸出、裏会社の経営を行っている。これはその組織の組長サザンカの副組長ラビエットの1日だ。
サザンカ「おやおや?まだそこに居続けていたのですか?バットエンド?」
井戸の外から飛び降りてきたのは普通のオーガより一回り大きなサザンカと、その側近のブレディ、そして副組長のラビエットだった。3人ともスーツを着てサングラスを付けている。ブレディが拳を鳴らしながら首を回す。
バットエンド総師カランダは一瞬動揺するも立ち直り、サザンカをにらむ。
サザンカ「…最後の返答は明日の夜に伺います。」
サザンカ一行が井戸から地上に戻り、事務所へ戻る。ラビエットは事務所の資料棚を漁り、ある1つの資料を見つけた。
ラビエット「サザンカ殿、すこし出掛けてきます。」
サザンカ「すぐに戻ってこい」
サザンカは葉巻を吸いながらラビエットの後ろ姿を見つめる。ラビエットはそんな彼の優しい目線を無視し、外へ…目的地へ向かう。ラビエットが向かった先はグレンの町の宿屋。宿屋に入るとコンシェルジュと宿の店員が驚愕すると同時に満面の笑顔になり問いかけてくる。
コンシェルジュ「まさか…あなたはもしや…!」
店員「英雄ラビエット様…!?」
ラビエット「…昔の話だ。今はただの犯罪者さ…今日はチェックインではなく、一番奥の部屋のお客さんに用があるのさ」
ヘビースモーカーなら知ってるであろう高級パイプを吸いながら答える。店員は理由は聞かず部屋の鍵を渡す。ラビエットは奥の部屋の宿台を置き、呟く。
ラビエット「…すまねえな、」
コツコツと足音を立てながら奥の部屋に向かう、鍵を使い、扉を開けるとそこに居たのは赤髪の冒険者と三人の女性。赤髪の冒険者一行は驚くが、冒険者が立ち上がりラビエットをにらみ、幼児のような暴言を繰り返す。ラビエットは上から冒険者を見下ろす。
赤髪の冒険者「あ?ここは俺達の部屋だ、しかも俺はこのグレンの英雄だぞ?お前俺の剣捌きで塵になりてぇか?」
…たかが巨大な魔物を殺しただけでよく言う、とラビエットは頭の中で答える。ラビエットは無言で相手の首を掴み、持ち上げる。冒険者はいきなりだったため、なにもできずもがき苦しむ。女性たちも冒険者と同じく暴言を吐く。だが助けようとしない辺り、この冒険者の信頼は薄いのだな、とまたしても頭の中で答える。そんな彼らの茶番劇を見て、滑稽と思ったのか、邪悪な笑みを見せる。
赤髪の冒険者「…ガッ!放せ!なに…笑ってんだ気持ち悪い…!」
ラビエット「英雄君がイキるな。まあ俺にもこの言葉は反ってくるが…じゃあ罪状を読み上げようか」
赤髪の冒険者「…なにっ!?」
ラビエット「偽名 ファティアス 本名 ギル…」
ギル「…!?なぜその名前を!」
ラビエット「罪状 強姦と殺人、そして浮気行為。」
ギル「…な!?やめろ!口を慎め!」
女性陣を完全に敵に回したところでまたも邪悪な笑みを浮かべる。そして今度は憎しみと悪意に満ちた赤い眼光を見せる。
ラビエット「…よって 死刑執行を勤めさせていただきます。」
ギル「!? や、やめてくれ!」
ラビエットは右肩の謎の機械にメモリを装填すると右手にサイバーな魔術式が展開され右手の5つの指先を相手の顔に向ける。装填した機械からは『感応〈レスポン〉』という音が発生する。
ラビエット「『マシンガンメモリ・ガン』…」
ギル「な、何をする気だ!」
ラビエット「記憶式・銃舞『サイバー・テロ』ッ!」
ラビエットが勢いよく叫ぶと右手の5つの指先から魔力弾を発射する。その魔力弾の嵐は数秒続き、ギルの顔はもはや人間ではないようだ。ラビエットは彼の頭皮に触れ魂を回収した後、窓を開け宙を蹴り、空を飛ぶ。
数日後この出来事はニュースとなった。題名はこうだ。
『ファティアス死亡 犯人の最有力は身内の女性三人!?』
…流石記者だ、真実を塗り替えるのは得意だそうで。そう頭の中で呟いた彼は滑稽と思ったのか暗闇の中、1人で笑い声を上げる。