ステンドグラスの淡くどこか不気味な光に包まれる。蝋燭の炎が揺れ動く。何処からか流れるオルガンの音色に聞き入って目を瞑る。扉が開く音がする。誰か来たようだ。朧気の中、ゆっくりまぶたを開けるとそこにいたのはどうやら山賊の二人組だった。男女の山賊は似合わず教会に出向いたらしい。山賊達は祭壇に向かって祈る。そんな山賊達に対して声をかけるプクリポ。
?「…見たところ山賊のようですが、なぜこのような処へ?」
山賊の男は祈るのをやめ、プクリポに答える。その声は見た目から予想しないほど優しげのあるものであった。
山賊男「…あぁ…今まで俺達が傷付けた人達の幸運を祈ってな」
?「…足を洗うということですか?」
山賊男「…いや、俺達は社会から放り出されたハイエナのような存在だ。復帰は無理さ」
山賊の男は苦笑いをしながら話す。
山賊男「生きるために傷付けるのはツラい、だがしなくてはならない。だからせめてもの償いでこうやって各地の教会に訪れて祈ってるのさ」
山賊の男は目を瞑り数秒黙想し、目を開く。神父のプクリポは声をかける。
?「…貴方達の行いは決して良いとは言えませんが、その心はすべてが黒いわけではないですね。…その白い心は神にも傷付けられた者達にも通じるでしょう」
男はまたも苦笑いをする。男はお辞儀をし、女の手をひき、教会から出ていく。
プクリポは彼らの後ろ姿を瞬きせず見守り続けた。
そしてプクリポは確信する。
彼らは助けなくては、と。
プクリポは通信機を取り出し、誰かに通話する。通話相手は明るく陽気で人に好かれやすそうな声だ。通話相手は…どうやらマーレロという人物らしい。
マーレロ「やあ、どうしたの?
…パーリ?」
神父のプクリポの名前は『パーリ』。プクレット大陸の辺境の地に佇む教会の神父を勤めている若い青年だ。
パーリ「ホワイトリストにいれてほしいやつがいるんだ。」
マーレロ「オッケー、名前はわかるか?」
パーリ「ごめん、名前は聞き出せなかった。山賊の男女コンビでウェディだ。……一応今盗聴して聞いたんだが次は祈りの宿にいくらしい。明日には着くだろうな」
マーレロ「…了解、付近だから待ってるよ。明日は晴れなんだけど、使っていいかな?」
パーリ「零に聞かないとわからないが…まあ前も許されてるしいいだろ」
マーレロ「了解、じゃあ一回制裁後送っとくよ。」
パーリ「ありがとー」
パーリが通信機を切ると、空気が変わる音を感じた。誰かに聞かれた予感がした。パーリはすぐさま教会の扉を閉め、ステンドグラスに触れる。
パーリ「嘆硝『フーガ』」
パーリは一瞬にしてステンドグラスの中に吸い込まれていく。