"カシャリ"と明かりが点くとそこは地下牢。血の香りが充満しており、壁一面にはさまざまな色の絵の具が迷彩のように疎らにかかっている。
どうやら俺は束縛されているらしい。椅子に座っており、手足を縄で縛られている。
そんな不気味なムードの状態をさらに引き立てるのは目の前のプクリポだ。黒いハットを被り、糸目の中から血のように赤く宝石のような眼球が此方を睨んでいるのが手に取るようにわかる。
幸い口は塞がれてなかった。
?「おい、ここはどこだ?」
そんな質問を無視するプクリポ。
?「…数時間前の記憶を甦させろ。お前の腐った脳ミソで考えてみろ」
俺はイライラを抑えながら、ここにくる前の記憶を甦らす。脳裏に忌々しく、辛い出来事が。
…そうだ。俺はあの変なオーガに殺されたんだ。そして気が付いたらここへ…
?「テメェもあのオーガの仲間か?」
?「……あぁ。その通りだよ、ファティアス君…いやギル君。」
ギル「…ッチ。で、ここはどこだ。俺は死んだはずだ!」
?「…はあ。君は死んでない。寧ろ生きてなきゃ困る」
ギル「…どういうことだ」
?「あのね、ギル君。今の状態で生きることを自分でやめることはできないんだよ。」
ギル「なにが言いたいんだ」
?「…お前の一生の命を保証してやる。死ぬこともできない、生きている心地もしない。」
謎のプクリポが開眼する。しかし眼球は見えなかった。恐怖で見えなかった。
俺は思い出した。
ギル「…ま、まさか。お前は…ラークス・ボウレットか?」
ラークス「…その通りだ」
俺は束縛されたまま絶望した。
ラークス「貴方にはガッカリさせられました」
ラークスはコートを着て、手袋を装着しながら淡々と話す。
ラークス「私は貴方のことを唯一無二の幼なじみかつ親友だと信じてました。種族が違ってても友達になれる。そう思ってました。しかし、貴方は裏切りました。あの忌まわしき殺人事件。あの忌まわしき大地震。」
ここまで話すと一息つく。しかしいきなりの怒声にギルは絶望し、後悔する。
ラークス「なぜ貴様は俺を置いてったッ!」
ギル「…」
ラークス「AA二号事件…忘れたとは言わせない…あの大きな揺れ…瓦礫が俺に落ちてきた、お前は助けれたはずだ。なのに助けなかった。お前は俺を殺したんだ」
ラークスは急に声を小さくし、コートのポッケに手をいれる。
ラークス「…だが俺は生きた。生死の淵を彷徨続けた。今度は…貴様だ。」
ラークスは憎しみの瞳を此方に向けると、いきなり壁に染み付いているインクが溶け、床に満遍なく迷彩のように広がる。
ラークスはインクの沼に溶け、同化する。
ラークス「…黒剋串『フォーク』…」
沼から聞こえる悪意の最大限に籠った声が部屋中に轟くと、地面から黒いインクが命を宿したように動きだし、俺を貫いた。
その痛みは想像を絶するものだった。あまりの痛みに吐血をし、辺り一面が血色に染まる。
そんな思いを知らないように貫きをやめないインク。意識が朦朧としていく。
世界が黒く染まっていく。やがて赤色の血も黒に見えてくる。
異変に気付き視線を変え、手足を見る。やはり黒く変色してしまっている。
この感覚が数分続くと軈て意識が消える。視界が真っ暗になる。
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