いつの間にか、あの頃のあの人と同じ年齢になっていました。
子供の頃、あの家にいくと、自分はすぐにコタツに入っていた記憶があります。冬ばかりを狙って訪ねた訳でもないのですが、いつだって寒かった印象があります。台所には、たくさんのお酒の空き瓶が置いてありました。
いつも帰り際には、たくさんの着古した服を渡してきました。「まだ着れるから持っていけ」と言われました。自分はそれがとても嫌でした。帰り道、貰った服を、手提げ袋ごと、森に投げ捨てていました。罪悪感でたまらない気持ちになって、逃げるように走っていました。
あの人が、そのような境遇になってしまったのにも、納得のできる必然性があるのだと、大人になってから知ることができました。
子供の頃に貰った五百円は、とても大金に思えました。お金持ちなのだと、純粋に信じていました。ただ、そのお金がどこから来たものなのかは、今ならば想像する事ができます。
何十年ぶりでしょうか、寒い夜のせいで魔が差したのかもしれません。鍵がかかってすらいない玄関をあけて、自分はぽつりと、こう伝えました。「新しい元号は令和になったよ」
そんな白昼夢を見ました。