私は何かに惹かれるように、その館を目指し、そして一歩足を踏み入れる。
不思議な音。
これは歯車?・・・・・・・否、発条(ぜんまい)ね。
どこか懐かしい、この臭い。
機械油? 海? それともエーテル?
・・・・・・・・・・わからない。
奥に進み、思わず息を呑む。
1つ1つ独立した函(カプセル)が通路に沿って整然と並んでいる。
その函の中に一人ひとり住人の影。
しかし、思い思いのポーズで固まっている・・・・・・・・・・これは、人形?
通路をどこまでも埋める函。函。函。
その函と同じ数だけの精気無き人形たち。
いや、最奥に、人形はおろか誰の姿も見えない、空虚な函が1つ。
その函を目指して歩を進めると、途中、1体の人形が・・・・・・・・
見る間に、白磁の頬に朱がまとい、その眼差しは私を捉えて離さない。
そして、唯一つ、そこだけは血の気の無い、薄い唇から漏れる一言・・・・・・・・・「 お帰りなさい 」
誰? あなたは? 人形じゃなかったの?
「 いいえ。 私は人形。 命を与えられた人形。 創造主は私たちをオートマトン(自動人形)と呼んでいた 」
「 そして・・・・・・・・・お帰りなさい 」
一斉に、人形たちに命の火が灯り、口々に同じ挨拶。 それは帰還を言祝ぐ挨拶。
「 お帰りなさい 」
「 お帰りなさい 」
「 お帰りなさい 」
「 お帰りなさい 」
「 お帰りなさい 」
お帰りなさい? この家に足を踏み入れた瞬間から、どうしても拭い去れない既視感。
そして、この人形一体一体に仄かな愛着、いや愛情を感じる。
そう、私がこの子たちの創造主にして、この館の主(あるじ)なのね。
けらけらけらけらけらけらけらけらけらけらけらけらけらけらけらけらけら
嘲笑が木霊する。
「 その空いた函の硝子に、我が身を映し出して良く御覧なさいな。
その函はあなたの函。 お帰りなさい、シリアル番号91-DO-0。 それがあなたの名前。
あなたも人形、私たちと同じ人形なのよ 」
Special Thanks
アリアドネー様 『昭和の空き地』『夜の摩天楼』に続いて、またしても、アリアドネ・ワールドなハウジング『オートマトン・ラボラトリー』の撮影、及び設定とは異なるかもしれないストーリー立ての許諾を、ありがとうございましたねねm(__)m
日誌読者の皆様、アズラン農村 15489—6まで是非、観に来てくださいねねm(__)m 見たことも無い世界が待っていますねね( `ー´)ノ
小説調の文章をしたためても、最後に落としちゃうのが、私の哀しいサガねね|д゚)