ある日の野良天魔。魔戦での参戦である。
ツメA「僕、天魔二回目なんですよー」
ツメB「わたしは初めてー」
おうふ。耐性の有無まではあえて首をつっこまなかったが、コイツは
ゴキゲンなことになりそうだぜ……。
戦闘開始からほどなくして、私は予想をはるかに超えるものを見た。
ツメAが寝るのはまだいいとして(良くないが)、僧侶がマホトーンを
くらって封印されてしまったのだ。自然治癒以外になおす術もない。
翼をもがれた鳥も同然、これでは僧侶の役目をなしえない。
天魔は五百戦以上を数えるが、僧侶が封印された例はついぞ記憶にない。
「オーマイガッ……なかなかジョークがきついぜ……HAHAHAHA、
きっと悪い夢を見てるんだ。ベッドが呼んでるぜ、ジーザス……」
と怪しいアメリカ人になりきって、即抜けはしないまでもそのまま
横になってしまいたいほどであった。
聞けば、封印ガード装備は以前は持っていたが、結晶化して手放して
しまったのだという。僧侶が封印Gを捨てて、よりにもよって天魔に
来るか……こいつはゴキゲンだぜ……。私はツメAと僧侶に尋ねた。
なんとか耐性装備を用意できないものかと。今考えるとよく素直に
応じてくれたものだと思うが、二人とも買いに行くという。
ツメの装備は細かいことを言い出したら、竜おまだの幻惑Gだの、
(人によっては吸収ガードまで求めるだろう)とキリがないのだが、
最低限眠りGがあればなんとかなるだろう。それだけはあるという、
ツメBと言葉を交わすでもなく「……」という感じでただ待っている。
その間も海底の牢獄前では、死体が次から次へと排出される。
私は、効率なんぞはわりとどうでも良い。それよりも、耐性の不備に
つけこまれて、落とさなくてもいい試合まで落とすのが嫌なのだ。
最初の一戦二戦は笑って済むが、負けが込んでくると、それでは
済まなくなる。戦犯探しのような落ち込んだ空気になってしまう。
「楽しくやろう」は、「だから耐性はいらない」ということではない。
楽しく終わるためには、「おつかれさまでした^^」と心から
言えるようにするためには、やはり最低限の耐性は必要なのだ。
だから待つ。私待つわ。いつまでも待つわ。
装いもあらたに挑んだ次戦で、ツメ二人の動きはまだまだ
おぼつかないながらも、僧侶は難なく仕事をこなし、私も力添えして
見事に勝利、オーブの入った紫箱が落ちてきた。「やったー!」
まさにその言葉がしっくりきた。快哉を叫んだ瞬間である。
「野良で会ったばかりの人に耐性を求めるなんて」という意見も
あるかもしれない。逆鱗にふれるようなケースもあるだろう。
しかし私は、自分の投げかけた小石が波紋となって広がり、
アストルティア全体への良い波及効果となることを信じたいのだ。
信念をおくとすれば、そこだ。