その日、私はランプ練金職人のサブキャラである仕事にとりかかっていた。
売るのではない、自分で着るための装備である。
まほうのよろい下☆3、未練金の品を買ってきてまずは汗と涙の結晶をつぎこみ、
マヒガード60%をつける。……大成功。第一の関門はくぐり抜けた。
引き続き、マヒガード40%を。針はなんとか成功エリアに踏みとどまった。
これでマヒガードは100%。しかし安心するのはまだ早い。
次で失敗したらすべては水泡に帰す。封印ガード40%を、天にも祈るような
気持ちでエイヤッとルーレットを回す。最後の練金も見事に大成功。
普通に買えば15万はくだらない、まほよろ下のマヒガード100%、
封印ガード40%の優良品が完成した。これまできじゅつしのぼうしの、
パル埋めつくしでまかなってきたマヒガードを、マスカレイドヘルムの良品
(HP+20)に代えることができる。魔法戦士として、一切の妥協がない
装備にチューンナップされた。強ラズバーンに行く、ただそれだけのために。
そしてこの結果は、天啓のごとく私の決意を後押ししたのだった。
強ラズが実装されて早半年になるが、いまだにエンドコンテンツの頂点に
君臨していることは確かだろう。耐性を完備するのは大前提、
さらには洗練されたPS、四人の無駄のない連携が求められる。
いたってシンプルながら、ドラクエ10の戦闘のエッセンスがこれでもか、
といわんばかりに詰まっている。一人でもしょっぱいのが混じってると勝てない。
タゲも見れない棒立ちタイガーは容赦なく振るい落とす。
それは魔戦にしても同じことである。蜘蛛や暴君では閑職に追いやられるが、
ことラズバーンに関しては中枢を司る職といってもいいだろう。
魔法使いがたまのバイト感覚でやるような杖一本の魔戦では太刀打ちできない。
「おまえは真の強者か?」と問いかけてくる、試金石として立ちはだかる存在。
それが強ラズバーンである。それだけにやってやろうじゃん、って気になる。
人間になったり、サポを解雇せにゃならんかったりと行くまでは正直、
めんどくさいのだが日課にするだけの価値は十分にある。
最近は攻撃力370超のツメも、HP500超の魔戦も散見されるようになった。
ステータスだけ取ってみれば、富豪職人にはどうしたってかなわない。
リアルでもゲームでも金を稼ぐ才覚がないことを思い知らされてゲンナリも
するのだが、ならば私は、長らくオーブ工でやってきた人間の意地として、
強ボスに関してはスペシャリストでありたい。強ラズバーンにかけては
第一人者と目されるほどの魔戦になりたい。ラズ以上のボスが実装されても
なんなく攻略してみせ、常に最前線にあり続けたい。
ver2.1中期からはスキル130が実装され、「なんでもできます」という
ゼネラリストよりは一職、二職にしぼったスペシャリストになることを
促されるようだが、この私の決意は誰に促されたものでもない、
信じてつき進むだけの一本道である。