ver1.0時代、もっとも割をくったのは戦士でまちがいないだろう。
最重要パッシブであるゆうかんを取ると、まったく武器に振れない。
かといって武器を優先すると、今度は後衛の僧侶や魔法使いと、
HPの差がほとんどない、という事態になってしまう。
きっと多くの戦士が、ゆうかんか武器か、というジレンマに悩まされたことだろう。
一方で武闘家、盗賊は、当時としては重要度の低かったおたからパッシブを見切るだけで、
倍率ミスの噂すら飛び交った、タイガークローのあるツメを使えた。
あからさまなツメ厚遇といわれ、戦士は戦死と揶揄された。
しかし冷静な視点で考えると、これはある程度、必要な措置ではなかったかと思う。
花形職である戦士を最初から強くすると、誰も彼もが飛びつく。
職業人口のバランスが崩れてしまう。だからこそ、なり手が少ないと思われる僧侶にも
チート級の能力を持たせた。まずは、レベルを上げやすいタイガーを使ってください、
運営の意図はそんなところではなかったかと思う。今でこそ、戦士は大器晩成であった、
といえるが、こらえきれずに多数の引退者を出したのは計算違いかもしれない。
ver1.1でレンジャーが実装され、ゆうかんとオノの両立、なんてことも可能にはなったが、
武器の倍率がそもそも低いため、強ボスなどの最前線ではお呼びでないままだった。
それはツメ職も似たようなものであったが……ver1.2になってガラリと様相が変わった。
魔法戦士の実装によって、バイキルトと相性のいいツメが一躍、最前線に躍り出た。
戦士は置いてけぼりであった。ここに圧倒的な格差が生じた。功罪半ばする、
タイガー一強時代の幕開けである。それは後々まで、負の遺産を残すことになった。
たまたま勝ち馬に乗っただけにもかかわらず、他人を見下し、ドラクエ10はツメゲーと
言い切り、自らを「最強職」と呼んではばからないような、驕り高ぶったツメを生んだ。
私からすれば最強職という考え方自体がそもそもおかしい。そんなの、運営のさじ加減で
どうにでも転ぶものだし、職業によって求められる役割もちがうのだから、
順位をつけること自体がナンセンスだ。自分が横綱なら、周りは太刀持ち、
ふんどしかつぎぐらいに心得ている。自分が桃太郎なら、周りは犬、猿、キジといった家来。
俺が気持ちよくタイガー撃つためのお膳立てしろ。回復おせーよ僧侶。全滅はお前のせい。
電池はとっととMPよこせ、杖だけ持ってろ、余計な手出しはすんな。
一強の座におぼれるあまり、「次の一手」を見据えることもしない。
(続く)