ここ十年ぐらいで、J−POP界にあらわれた一番の名曲を挙げるとすれば
YUIの「CHE.R.RY」だと思っている(次点でAKBの恋チュン)。
とにかくこの曲は、ベタベタしたJ−POPの文法にまったく則っていないところがいい。
英語の歌詞を乗せれば、シェリル・クロウあたりが歌ってもまったく違和感がない。
アルバムを聴いてみても、YUIは才能が至るところで爆発している。
とうてい一人で書いてるとは思えない。もしかしたらYUIとは、
背後にあるクリエイター集団も含めての、プロジェクトとしての総称なのかもしれない。
だとしても私は全然かまわない。それで受け取ったものが揺らぐこともない。
歌われているのは、「恋物語」ともいえないちいさな恋心の芽生えだ。
時期的には、桜のつぼみが花開かせるタイミングを、いまかいまかと見計らっている、
ちょうどいまぐらいの時期だろうか。夜風はまだまだ、ひんやり冷たい。
この曲を聴くたびに、歌に主義主張はいらないな、と思う。
アジテーションの強い歌は体よく利用される一方で反発も生み、
音楽のもつ本来の意義から遠く離れたカオスに沈み込んでしまう。
それよりも、このほほえましい恋心が、守られるためにはどうあるべきか。
ふと考える、それが間接的に作用する。この世界をよりよい方向へと導く。
拳闘士の盾、トルネコさんから一向に買える気配がないので、
普段はあまり根つめてやらないコロシアムで、ランクをBまで上げてもらってきた。
武闘家、バト、まもので装備できる数少ない盾。皮の盾は練金がひとつしかつかないので、
なんとも欲しいところである。自分のサブ職人で練金できればいいが、
そうもいかないようなので、「にいさま」と呼んでいる、
(たぶん向こうのほうがずっと年下)
長いつきあいのフレに依頼することにした。おめあては呪文耐性7%一択である。
一投目でいきなり失敗して「いきなりかい!」と思ったが、
次のパル狙いでものの見事に、呪耐7うめつくしがきた。いい仕事してくれた。
このところオーブ工もキラマラもさぼりがちで、ややもすれば惰性でプレイしてた感もあるが、
俄然やる気が出てきた。コロシアムでも魔法使い相手にかなりのアドバンテージだろう。
何千時間というプレイ時間の中では、取るに足らない一コマかもしれない。
しかし今回の、満点以上といえる成果は私にとって大きかった。
冷たい夜風に乗じて舞い込んだ、春の訪れを告げる一通のメールのように。
花が芽吹くのにも似た、清新な感覚を私にもたらしてくれた。
この先、ドラクエ10の世界で何度、春を迎えるのかはわからないが、
主義主張に身をやつすより、誰も気に留めないようなちいさなことを守っていきたい、
そうしてこの世界にとどまりつづけたい。「CHE.R.RY」のYUIの、
はかなげでたよりなげで、それでも胸にくいこんでくる歌声に身をゆだねながら、
早春の昼下がりにそんなことを思った。