「すべてのお金は幻想である」こう言うと、異議をとなえる人もいるだろう。
いやいや、俺は働いて得たお金で地に足のついた、
リアルな生活を営んでるぜ、と。それもそうなんだけど、
まあもうちょっと聞いてほしい。
昔の偉人の顔が印刷されたただの紙っぺらを、崇め奉るなんて
よくよく考えればおかしな話じゃないですか。
お金自体にはティッシュ一枚ほどの価値もない。鼻もかめやしない。
だけど流通の便宜をはかるために、国家的に「お金は価値があるよ」
という約束事を作り上げてるわけです。まさに共同幻想。
その約束事だって、明日いきなり無効になる可能性もまったくのゼロではない。
そう考えると、我々も不確かな基盤の上でかろうじて生をつなぐ、
はかなくもあやふやな存在と言う他ないわけだ。
このドラクエ内のゴールドは、元々ヴァーチャルなものだけに
リアルマネーよりももっと「幻想み」が強い。
ちょっと装備を揃えようとすれば何千万、あるいは何億という
ゴールドがまたたく間に飛んでゆく。稼ぐのは決して楽ではないので
笑えないようだが、幻想として機能してるからこそ、
俯瞰した第三者の目で笑い飛ばしてしまえる視座をくれる。
それが私がこのゲームを好きな理由のひとつでもある。
このゲームをはじめてからお金にまつわるトラブルは何度となく聞いた。
しかしお金は幻想である、この大前提に立てばやたらと執着して
お金に振り回されることがそもそも滑稽に思えてこないだろうか。
私はお金を稼ぎたい、だけど踊らされるのはごめんだ。
お金をしきつめたカーペットで自分の好きなステップで踊りたいのだ。
……と、ここまで書いて思ったのだけどお金が幻想であることを一番理解しているのはダイスで素寒貧になってもあっけらかんと笑ってる人かもしれない。私もまだまだ修行が足りないようである。