カルドセクシの冒険日誌

昭和の古い人間なので、老害じみたことをたれ流しますけど
昨今の言い回しでどうにも好きになれないのが
「感謝しかない」というアレである。近しい人に対する感情は
0か100しかないのかね？　そんな単純なものじゃない、
Just onlyなわけねえだろと思ってしまうのだ。

あえてシンプルに表現するのが令和向きなのかもしれないが、
本来ならポジティブなものも、ネガティブなものも、
第三者には計り知れないいろんな感情が渦巻いているはずなのだ。
古田敦也氏の野村克也監督への思いしかり、辻ちゃんと加護ちゃんしかり。
また、それでいいのだ。私自身、いろんな人との出会いと別れを
経てきたけれども、「感謝しかない」という通り一遍の言葉では
あふれ出てしまうものが多すぎる。こんな時、言葉とは文章とは、
なんと不便きわまりないものかと思う。しかし我々は、
心の綾までもピタリと読み取るテレパシー能力を与えられているわけではない。
結局は言葉に託すしかない。うまく伝わりますように、
すべてがうまくいきますように、という祈りをこめながら。

SNSなどでよく見かけるが、「出会ったすべての人に感謝」
みたいな文言をスローガンに、二言目には感謝感謝と、
やたら感謝の尊さを説く人がいる。それだけなら異存もないが、
感謝すれば運気もアップする、なんてことを言われると引いてしまう。
それに、お人好し面して感謝ばかりしてるといいように毟られるのが
この世の中でもある。これは印象論ではない。
若い頃の私はお人好し面して、周りの人たちは自分の夢を応援してくれてると、
なんとなく無邪気に思っていた。しかし現実は食い物にされ、
賞味期限が過ぎたらポイ捨てされるだけだった。

遅きに失した悟りなのかもしれないが、時に他人を否定する形になろうと、
私は私の哲学を、規範を、掲げて生きていくべきなのだと思った。
そんな傲慢な生き方をしていると人は離れていく。でも誰かは残る。
そこではじめて、残ってくれたことに感謝すればいい。

「感謝しかない」という言い回しからよくここまで、
グダグダとひねくれたことを書き連ねるもんだなと
自分でも呆れるけど、このドラクエXのキャラクターは
リアルとはちょっと違う自分を演じられる、という点で
機能しているし、そこはありがたいことだと思う。
このキャラクターなら素直に「ありがとう！」と言える。
こちらが本当の私だ、という話ではない。リアルを放棄して
このキャラクターに逃げ込みたいわけでもない。
世を拗ねた私の調整役としてはうってつけなのだ。
このゲームをはじめてからは嫌なこともいろいろあったし、
感謝しかない、わけではないけれど。