一昔、二昔前のヒット曲を教科書に載せるような風潮があるでしょう。
送り手側からすれば青春よ再び、若者よこの歌を聴け、
みたいなことなのかもしれないが、私はどうもそういうのが好きではない。
教科書に載ってるだけで反発を覚えることもあるのではないか。
私にとってはビートルズがそうだった。「イエスタデイ」、
「ヘイジュード」あたりが載っていたけれど、
大人に押しつけられるつまらない音楽という印象を持ってしまい、
本当の魅力にかじりつけるまでには結構な回り道をしてしまった。
誰にとっても幸せな結果にならないと思うのだ。
フジファブリックの「若者のすべて」が載ると聞いた時も、その手の危惧を抱いた。
これは晩夏の歌だから、本当は季節外れもいいとこなんだけど、
書きたい時が書くべきタイミングだということにする。
私にとってはドラクエXが発売された夏が、
自分が若者でいられた最後の夏だという感がある。
強ボスが実装されると、腕に覚えのある者が昼も夜も、
蜘蛛の泉やキラキラ大風車塔に集った。とにかく楽しかった。
このまま時が止まればいい、と何度も思った。
しかし時は無情にも過ぎ、ドラクエXはかつての栄華を失ってしまった。
フジファブリックが志村正彦という中枢を失ったように、だ。
最後の花火に今年もなったな
何年経っても思い出してしまうな
私も歳を取ったが、「若者のすべて」を聴くたびにあの夏が胸に反芻する。
こんな私の思いを、ドラクエXをはじめたばかりの今の若者に
説明するのが不可能なように、この曲を教科書に載せて、
押しつけがましく教えるのがいいことだとは思わない。
中には、誰に教わるでもなく自らロックの歴史を掘り下げていく
若者もいるだろう。過去のドラクエをプレイしてみるように。
「若者のすべて」に、行き当たる若者もわずかばかりいるかもしれない。
それでいいのだと思う。もしそうなったら、少しばかりは言わせてほしい。
この曲には、教科書には載ってないいろんな感情が描いてある。