提案広場には今も、「魔法戦士を強化してください」という投稿が
散見される。攻撃呪文を追加しろだの、フォースを味方全員に
かけられるようにしろだの……。果たしてそうせねばならないほど、
魔法戦士は不遇な職業なのだろうか? 断じて否である、と思う。
「杖でペチペチ叩いてバイキ、パサーしかやることがない」と
いうならば、それはそういう戦い方しか選んでいないだけなのだ。
話が横道にそれるようだが、ここで私のハンドルの由来となっている
ゲーム、「カルドセプト」について語ってみよう。
これはカードゲームである。数百種類とあるカードの中には、
誰の目にも強いカード(こういうので揃えた大味なブックを俗に
“大名ブック”という)の他に、パッと見弱っちい、どういう局面で
使うのか意味不明な能力を有するカードも数多く存在する。
だからといってカルドセプトのユーザー、いわゆるセプターで、
「このカードは意味がわからない、もっと強くしてください」
などと異議を唱える者はいない。どのカードにも必ず適材適所の
局面があり、それを読み解くことがゲームの楽しみの一つだからだ。
使える呪文こそ5種類と少ないが、「魔法戦士はやれることが少ない」
などと私は思ったことがない。まあ誰にも勧めるわけではないが、
スキルをすべて100にすると世界は変わってくるのである。
ギガスラッシュはイッドや、水竜でのがいこつを一掃するのに使える。
範囲攻撃なので、タイガークローとはまた違った「適所」がある。
強ボスでの相方はもっぱらツメだが、迷宮では魔法使いと組むのも
面白い。暴走魔法陣をしき、敵を魔法使いに近づけないよう相撲
しながらぶきみのひかりなどで補助する。ボスがトロルバッコスなら、
会心完全ガードしつつ後衛を守る。戦士やパラディンといった、
自分よりも重い職がいれば壁を任せ、後ろに回って弓を撃つのもいい。
バイキ+ライトフォース+さみだれ撃ちで、他の物理攻撃が顔色を
失うほどのダメージを叩き出せるのである。世間ではいらない子の
両巨頭扱いされてる弓とフォースだが、それだけに痛快である。
以上に挙げたのはわりと有名どころだが、追究すれば他にもいろいろ
ありそうだ。「読み解く楽しみ」を放棄してただ強化を迫るだけでは、
物足りなさがいや増す一方で結局はどこにもたどり着けない。
ドラクエの世界が“大名ブック”みたいになっても面白くなかろうに。