蒼天のソウラ世界観ベースの二次創作
ハクトくん宅のマージンさんをお借りしています。
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「ハクトー!どうしたー!父さんがいま助けるぞー!!」
「呼ばれて飛び出て今参上、ごまー、きたぞー」
慌てて駆け寄るクレイカラーのジャケットの人間男性と、紺のノースリーブコートの裾を揺らしゆったり歩くのウェディ男性、ハクトとごましおが指名した最高の助っ人がこの2人だった。
しばらく呼ばれた2人は呼んだ身内を可愛がって居たが、その場に知らない人がいる事に気付き襟を正す。「あー、おほん。爆弾工作員《ボムスペシャリスト》のマージン、ハクトの父親だ」
「アッ、ハイ。ミサークです。二つ名は特にね……ありません。ごましおのチームメイトっす」
保護者2人が挨拶を交わしてる間、安心の中に少しだけ混ざる『怒られたらどうしよう』という気持ちが靴に入った小石のようにハクトとごましおの心をちくちく刺した。
先にジェリーマンに気が付いたのはマージンの方だった。
「すわっ!魔物!?」
「父さん止めて!ここ街中!」
マージンが懐から何かを取り出そうとするのを必死で止めるハクトの図はコントのようで、子ども組の間で張り詰めていた緊張感が少し緩んだ。
「マージンさん、大丈夫っすよ。そのジェリーマンが本当にやる気なら、息子さんもごまも多少なり怪我してますわ」
「あ、あぁ。そうか、そうだよなぁ?アハハハハ~」ミサークに諭されたマージンは笑って誤魔化したが、ゴーグルの下にある眼は一時たりともジェリーマンから離していない。
(そりゃそうか。実の息子さんだもんなぁ、守りにいくよなぁ)
おどけた言動に隠された本質が垣間見えて、ミサークは内心で口笛を吹いた。
※
「……で、君たちはこのジェリーマンを助けたいと?」
子ども組に呼び出された理由を聞いて、マージンは2人に向き直った。
「はい。知らなかったとは言え、ぼくは助けるって言いました」
「子どもと離ればなれはかわいそうなの……」
実に子どもらしい考えだとマージンは思った。
そして、それはマージンにとってはとても喜ばしい事だった。
(なんて素直で優しい子に育ったんだ!出先でお友達を作るコミュニケーション能力も見る目もマル!そして何より、有事の際はちゃんと大人を頼ってくれる…ッ!)
祝砲をぶっ放したくなる気持ちをググっと堪えてマージンは続ける。
「ハクト、その『知らなかった』って部分がちょっと気になってな。……もしかして、最初は違う姿だったのか?」
「は、はい!最初はドワーフの女の人だったんです!」
「「あっ」」
ハクトの証言に、大人達は同時に声をあげた。
「覚醒遺伝っすね」
「って事は密輸か……」
ジェリーマンは昔、他者に変身できる能力があったと言われている。
しかし時の流れの中でその能力は退化し失われてしまったとされている。
しかし、ごく稀にまだ変身能力を持った個体が存在し、裏ルートにて高値で取引されるのだ。
「まだ騒ぎになってないから、ここには来たばっかってとこっすかね?」
「とは言え、購入者や密輸犯が探しに来るのも時間の問題か。よし、さっさと移動しようか!」
自分たちが四苦八苦して調べた情報に少し付け加えるだけで正体にたどり着き、次にどう動くかまで予測をたてる大人達をハクトとごましおはただ言葉を呑んで見守っていた。
「ハクトくん、大人ってすごいね」
「えぇ、ごましお君。かっこいいですよね」
ドルブレイブとは違うけれど、ハクトにとってのマージン・ごましおにとってのミサークは、今、紛れもなくヒーローだった。