マージン一家ファンアート
会話多め
※※※※米※※※※
「なぁハクト、父さんは仕事柄色んなところでカツ丼を食べるんだけどな?」
「仕事柄」
夕飯時、父・マージンがカツ丼を話題に出した。
ハクトはその何割が留置所の差し入れなのかとまぜっ返したいのをグッと堪え、一単語を復唱する。
「面白いんだぞー?大陸ごとに見た目が違う、味が違う、指してるものが違う」
ハクトの頭の中には、母・ティードが作るトンカツを玉ねぎと一緒に煮て卵でとじるカツ丼が浮かぶ。
「母さんが作るカツ丼と違うの?」
それ以外のカツ丼が思いつかず、ハクトは思わず食いつく。
「おお、千差万別だぞー?例えばだなぁ……」
1『グレン城下のビフカツ丼』
マージンが最初に思い出したのは、グレン城下で食べたビフカツ丼だった。
「グレンで食べたのは凄かったなぁ。
ボウルみたいな丼にご飯がミッシリ詰まっててさ、その上に荒いパン粉でカリッカリになった揚げたてのビフカツ!
それがさ2枚乗ってるの。
味付けは塩コショウだけなんだけど塩っ気が濃い目で、白米がするする入っちゃうんだよな~。
気がついたら一杯平らげてたよ。
流石に腹がパンパンですぐには動けなかったけど…」カツ丼と言えば豚肉といった価値観のハクトにとって、牛肉のカツと煮ないカツ丼というワードは真新しく、夕飯の最中だというのに思わず喉がなった。
「へぇ~、凄いなぁ。流石オーガの街、豪快だね?」「そうだな、あのシンプルで豪快な感じは正にオーガ!って感じだったな。今度ウチのみんなで食べに行ってみるか?」
ハクトはマージンの話術にすっかり夢中で、お茶を飲みながら父の話に耳を傾けて顔を輝かせている。
「それ、いいね!他の大陸ではどうだった?」
「そうだなぁ、他に面白い丼と言えば…」
2『ジュレットのタルタルエビカツ丼』
変わり種というキーワードでマージンが思い出したのは、ジュレットの街で食べたエビカツ丼だった。
「ジュレットでカツ丼って頼んだら、エビカツが乗ったのが出てきた事があったなぁ。
衣がさっくさくで身がぷりっぷりのエビカツに、タルタルソースがかかってたんだけどコレが美味しいのなんのって!
エビカツにタルタルって、こってりにコッテリだと思うだろう?
それがさ、中に入ってるピクルスの酸味で口の中がさっぱりするから、いくらでも食えるんだよなぁ。
エビの甘みも強調されるし、いいことづくめさ」
サクサクとぷりぷり、2つの擬音がハクトの好奇心と空腹中枢を刺激する。
ご飯を食べたばっかりなのにもうお腹が鳴った気がして、2杯目をお茶碗に盛る。
「サクサクでぷりぷりかぁ、美味しそうだなぁ」
「あぁ、これもいつか食べにいこうな!」
3『カミハルムイの煮カツ丼』
「父さん、エルトナ大陸のカツ丼はどう?」
オーグリード・ウェナと来たので、ハクトは次にエルトナを指名してみた。
「エルトナは基本、うちのカツ丼と同じだよ。
トンカツと玉ねぎを出汁で煮て、卵とじにするタイプ。
いやぁ~、母さんと2人旅してた頃にカミハルムイで食べたカツ丼が美味しくてなぁ。
赤身と脂身のバランスがいいトンカツが、玉ねぎの甘みが染み出したつゆとふわとろ卵を吸って、旨味の塊になるんだよ。
そこに白米の甘みと漬物の酸味!このサイクルがずっと続いて欲しいと思ったんだよなぁ~。
ま、食べたらなくなっちゃうんだけどさ」
ハクトは食べ慣れたカツ丼が出てきて少しホッとした。
オーガである母がオーガ式では無くエルトナ式のカツ丼を作るのは、その時の思い出なのかな?などと考え、父の食レポに和みという彩りを添えた。