4『ドルワームのカツカレー丼』
「そうしたら、ドワチャッカではどんな感じだったの?」
次にハクトが指名したのはドワチャッカだった。
ここまで聞いたら、全大陸分確かめないと気が済まない。
「ドワチャッカなら、ドルワームのカレーカツ丼を推すね!
いつものサラッとしたカレーとは別に、とろみがついた専用カレーがかかってていい感じにカツとご飯に絡むんだ。
このスパイシーなルーが米やカツの美味さを何倍にもしてくれて、そりゃもう無我夢中で頬張っちゃうんだよ。
食べ終わった後はスパイスのおかげで血流良好!汗だくになるんだけど、そのおかげで店を出たあとの風が気持ちいいんだ。
一番地元の生活に密着した食べ方かもしれないな」
カレーライスにトンカツという食べ盛りの男子には嬉しい組み合わせは、聞いているだけでハクトの心を弾ませる。
ドルワームの渇いた熱風に頬を撫でられた気がして、ハクトは一気に冷たいお茶を流し込んだ。
5『プクレット村の甘だれチキンカツ丼』
「そういえば、プクランドにもカツ丼ってあるの?」次にハクトが指名したのはプクランドだ。
ここはどうにも丼というイメージが湧きにくく、どうしても疑問系になってしまう。
「それがあるんだよ。確かにプクランドはメギス鶏の唐揚げが有名だけど、カツにしても美味いんだ。
プクレット村で食べた、ひと口サイズのカツにあまじょっぱいタレがかかってるカツ丼が良かったなぁ。
多分醤油と砂糖…とか、それ系の味なんだけど、まだ何か足りないみたいで同じ味が作れないんだよなぁ。いやぁ、あまじょっぱいは正義だね。カツもご飯もパクパク行けちゃう。
最後にタレと油の余韻に浸るも良し、ジャスミン茶でリセットしておかわりするも良し、たまらないね!」だんだんと興が乗ってきたのか、次第に興奮気味になる父の語りにハクトも高揚してくる。
早速明日どこかに食べに行ってみようかと、頭の中で予定表をチェックし始めた。
6『グランゼドーラのデミグラスカツ丼』
「レンダーシアはどうだった?」
最近航路が復活したレンダーシアにもあるのか気になって、ハクトはたまらず聞いてみる。
「レンダーシアは大体煮カツ丼なんだけど、変わり種もあるぞ!
グランゼドーラで頼んだら、薄めのビフカツにデミグラスソースのかかったカツ丼が出てきた事あってな?牛肉とデミグラスならハヤシライスじゃない?って思ったんだが、全然別物だったね!
衣が重要でさ、アクセントでありコクを足すものなんだ。
あの形式を考えた人は天才だと思ったね。
ちょっとお高いけど、損した気には全然ならないよ」もはやご当地グルメとなったカツ丼に、ハクトは旅情をそそられる。
「色々なカツ丼があるんだなぁ。それで、父さんはどれが一番好きなの?」
ハクトの疑問に、マージンは空の丼を掲げて答えた。「はっはっは、決まってるじゃないか。母さんが作るカツ丼さ!」
「やだ!マーちゃんたら、照れるじゃない!」
「ンガックック」
いつの間にか洗い物を終えたティードが照れ隠しに小突いたが、良い場所に入ったのかマージンはむせた。「ごちそうさまでした」
仲の良い両親を見て少しむず痒くなったハクトは2つの意味を込め、食べ終わった食器を洗いに席をたった。