ミザール 『 くっそ!どこいったんだ!いつもいたずらばかりしやがって! 』
ここはセレド。環状に"作られた"レンダーシア大陸の中南部に位置する町。
雄大な穀倉地帯が広がり、裕福な『食』を支えるメルサンディ。
モンスター闘技場で栄え、人々の『娯楽』を満たすアラハギーロ。
1つの大陸で、人々の欲求を描き出すこのレンダーシア大陸。
ダーマ神殿のあるここセレドの町は、レンダーシアの『信心』を描く街である。
~ 大人のいない、子供の町。 ~
このお話は、とある冒険者が、この町の事件を解決した後の物語である。
少年と少女の声が響き渡る。
ミザール 『 くっそ!どこいったんだ!いつもいたずらばかりしやがって! 』
ミラカ 『 まだその辺にいるはずよ!みんな!手分けして探して! 』
短めの金髪を逆立て、走る少年は、ミザール。
少し愁いを帯びた表情を見せる少女は、ミラカ。
二人はこの町の女王、リゼロッタを支える親衛隊であった。
周囲の子供たちは一斉に散る。統率された散開では無く、走り出した、といった方が正しいか。
文字通り、草の根を分けての大捜索だ。
子供たちは 走る。 走る。 走る。
その顔には、笑顔すら見える。必死な表情のミザールとミラカとは対照的だ。
('ω') 「 うふふ♪ なんかちょっと。かくれんぼみたいだねー 」
('∀') 「 ほんとだねー♪ ユウちゃん、またきてくれないかなー 」
('◡') 「 お勉強ばっかりだと、ちょっと疲れちゃうものねー 」
草むらを掻き分ける子供たち。酒場から繋がる洞窟に駆け込む子供たち。
階段を駆け上がり、段差を飛び降り、シーツくぐり、走り抜ける。
大人のいないこの町は、全てのエリアが子供たちのテリトリーだ。
『 あったー! みんな!こっちよー! 』
ミラカの高い声が響く。
その声の方を見ると、彼女の指差す先には、大量の果物が積み上げられていた。
『 はぁっはぁっ…ホントにもう、何が目的なんだよ。毎回果物を盗んでは、隠して。 』
追いついてきたミザールが毒づく。
その後ろから、小さな子供たちも徐々に追い付いてくる。
('ω') 「 あー! リンゴみーつけた! 」
('∀') 「 やったー!今日も僕たちの勝ちだね! 」
('◡') 「 おにーちゃん!おねーちゃん!早く持って帰って食べようよー 」
大喜びの子供たち。
それを見ながら、年長者であるミザールとミラカは、少し複雑な表情をする。
『 あのなー、みんな。人の物を盗むっていうのは良くない事なんだぞ 』
『 そうよ。あいつは悪い奴なの。果物を盗んでいっちゃうんだから 』
('ω') 「 えー、ユウちゃん、きっと悪い人じゃないよー 」
('∀') 「 だってイチゴもリンゴも、見つけた時、盗まれる前より増えてるじゃん 」
('◡') 「 だからきっと、いい人なんだよー 」
一か月前。この町に訪れた冒険者。ユウ。
背丈は子供たちと変わらない、いやむしろ低いプクリポ族。彼はその一人だった。
職業が盗賊であると名乗った彼は、ミザールからこの町の状況を聞くと、翌日から"いたずら"を始めた。
お菓子を盗んだり。小さい子どもの寝顔に落書きをしたり。勉強の為に集められた紙が、
変な形に折られている事もあった。
('∀') 「 あの紙、鳥さんみたいで楽しかったなー 」
彼のいたずらは、小さい子供たちの勉強や面倒を見なくてはいけないミザール、ミラカにとっては
苦々しいものであったが、小さい子供には、それと反し、彼はヒーローであった。
('ω') 「 ねー♪ お勉強も大事なのは判るけど、遊びたいもんねー 」
('∀') 「 ユウちゃん来ると、お外走れるからだ―いすき♪ 」
('◡') 「 また、イチゴとリンゴ、増えるかなー♪ 」
セレドの町には、毎日のように子供たちの声が響き渡るようになったのだった。
♪ガラーン ♪ガラーン
突如、子供達の声を切り裂くように、教会の鐘が鳴り響く。
ミザールとミラカの表情が一変する。
” そうでしたか…やはり魔物たちが集結しているというのは事実だったのですね ”
~To be continued~