さようなら。 また会おうね。 きっとまた会えるよね。
<再会>
♪チリン チリーン
突然鳴った、ログイン通知。
とある平日休みの日。
チムメンが誰もいない中、のんびりチムクエを消化中のあたし。
インしているフレも少なく、少しマッタリとした時間が経過していた中での、ログイン通知。
彼女でした。
『 おかえりなさい!帰って来たの!?うれしい!! 』
チャットで打ち込む間。言葉が本当に漏れそうになりました。
心から出てきた、一言。
彼女のアイコンを見た瞬間。
あの時に共に歩んでくれた。一緒に怒って、一緒に泣いてくれた記憶が。鮮やかに蘇ります。
恥ずかしかったのでしょうか。
少しの沈黙の後。彼女はこう返してくれます。
『 家出娘が、一旦服取りに帰ってきただけ 』
『 的な感じでもどってきました^^; 』
あははw
いつもの彼女らしい返しに、心が躍ります。
久しぶりのやり取りの感じに、溢れだす喜び。
再会の感動に、胸が震えます。
<交流>
" ねぇ、元気だった? "
それから一時間ほどでしょうか。いつもの雑談。
チムチャで、とりとめのない会話が続きます。
再会したからといって。特別な事はない会話。
あぁ…何気ないこんなやり取りが、幸せなことだったんだ。
儚い糸が、また繋がった今。
その何気ない時間がどれだけ幸せなものであったのか。改めて実感します。
けど。その糸は儚い糸。また切れて飛んでいく糸。
私達を繋ぐのは、儚い糸。
<別れ>
そして、お別れの時間が来ました。
リアル世界の用事でログアウトしなければいけないあたし。
『 そろそろ落ちるね 』
「 またです^^ノシ 」
彼女は、今まで通りのトーン。いつもの半角文字の顔文字。
何故かその顔文字を見て、もう会えないんじゃないか…そんな想いが心をよぎります。
この儚い糸は、もう繋がらないんじゃ…
そんな漠然とした、不安。
あたしは、つい。この一言を付け加えます。
『 …キャラクター消しちゃダメだからね 』
…やだな。良い大人が。依存症なの? 重たいね。ゲームなのに、バカみたい。
自己嫌悪の感情が心を蝕みます。
少しの間をおいて。彼女が口を開きます。
そこには、先程までの明るかった彼女のトーンはありませんでした。
「消しませんよ」
「 このキャラクターは、メイさんと私の、唯一の繋がりなんですから 」
「消しませんよ」
<優しい糸>
” ありがとう… ”
彼女にそう告げて。あたしはログアウトしました。
次にインした時は、もう彼女の姿はありません。
私達を繋ぐ、儚い糸。
細くて弱い、儚い糸。
出会いが紡いでくれた、奇跡の糸。
すぐ切れちゃう、儚い糸。
けどまた繋がる、優しい糸。
たかがゲームの関係。されど大切な人間関係。
とても愛おしい、儚くて、優しい糸。
さようなら。 また会おうね。 きっとまた会えるよね。
気がつくと、曇り空から、ジリジリとした日が射していました。
もうすぐ夏。私達にとって、出会ってから2回目の夏。
あたしの旅路は。まだまだ続きます。
~Fin~
※ また、会おうね。