今日はアズランに買出しに行ってきた。帰りの馬車の中でこの日記を書いている。
シュピは家でお留守番だ。どうしてもついていきたいと駄々をこねたから、だめだ と少し強く言ってしまった。
離れるのは私だって心配だが、仕方の無いことだ。
せめてもの償いにといっては大げさだが…お土産を買ってきた。渡して謝ろうと思う。
シュピと私は幼馴染で、共にオルフェアの街で育った。
愛嬌があり、優しくて世話好き。みんなから好かれる人気者だった。
頭も良かった。将来は何になりたい?と聞かれると、オルフェアの子供は大抵サーカス団員!と答えるものだが、シュピは違った。
レンダーシアに渡ってグランゼドーラの学校で勉強して、コンシェルジュの資格を取るのが夢だったそうだ。
そうだ というのは、私の母親から聞いた話だからだ。
幼少時、私達は今ほど親密ではなかった。話した事すらなかった。はっきり言って、2人の住む世界が違ったから。
私は根暗で頭も悪く、友達も居なかった。母親に彼女を引き合いにだされ、見習いなさいよとよく言われたものだ。
それがあったから、むしろ私はシュピのことが疎ましかったと思う。あっちは私のことをどう思っていたかは分からないが、影の薄い私の事など気にも留めていなかっただろう。
その後、シュピは予定通りレンダーシアに渡って、コンシェルジュの資格を取得する。
私はと言うと、定職にも就かず日雇いの仕事をこなすのみ。その日暮らしだった。
全く違う道を進んだ2人だが、やがて運命的な出会いを果たすことになる。それは1年前のことだった。
…そろそろ馬車が家に着く頃なので、続きはいつか書くことにする。