仕事を終えて家に帰り、夕食を食べ終わった後。
畳でごろごろしているシュピに向けて、私は重大な発表をした。
「注目ー!!」
シュピがぴょんっと飛び上がる。
「ほへ?ど、どしたのー?」
私は両拳を腰に当て、股を広げ胸を張って言う。
「始めはどうなるかと思われた新生活も無事に軌道に乗りました!私の仕事は順調!シュピの料理も最高!家はー…ちょっとぼろいけど!」
私は続ける。
「生活安定記念と!頑張ってる2人への労いを込めまして!なんと―――」
シュピは、始めは信じられないといった様子だった。
私は証拠品だとばかりに、宿のパンフレット、観光ガイドブック、カメラ等を次々とカバンから取り出し、テーブルの上に並べていった。
1つ何かが出るたびにシュピの表情はどんどん明るくなっていき、最後に大陸横断鉄道の切符が出た時には、この狭い家の中を狂喜乱舞していた。
プランは練ってないし、いろいろ準備しないといけないから、出発はまだ先になりそうだ。
…と言い終わる前にシュピが椅子につまづいて転倒した。痛かったのか、起き上がる気配が無い。
大丈夫?と駆け寄る私。するとむくりと顔をあげ、
「ジュセ、大好きー。」
半泣き半笑い、涙声があまりに面白かったので、私はその場で笑い転げてしまった。
それにつられて、シュピも再び笑い出した。
初めての2人での旅行。
せっかくの機会だ。押さえる所だけ押さえて、あとは思いっきり楽しみたい。
一生忘れられない、旅にしようと思う