シュピはすっかり活発になった。
大きな声が出るようになったし、動き回ることも出来るようになった。
今朝も風呂場のドアを激しく叩く音で、文字通り叩き起こされてしまった。
数日前は床に臥していたとはとても思えない。賑やかなのは良い事だが、極端すぎると思う。
まぁ、その方がある意味シュピらしいか。変に納得してしまう。
残念なのは、直接顔を見る事が出来ない事と、私の寝不足が酷い事か。
食事は相変わらずしっかりと摂取している。
見境なく食べてしまうので、正直、食材をわざわざ調理する必要性があるのかは分からない。
しかし、そこに関してだけはシュピの尊厳というものをしっかりと守ってやりたい。
どんな状況に置かれても、シュピらしさを守り続ける事が出来れば、それは生きているという事だから。
そう思って、私は鍋を振うのだ。
もう、シュピから離れる事は殆ど無い。
仕事は辞めたし、食材も買い込んでおいた。
無くなればまた行かなければならないが、そう回数も多くならないだろう。
状況によっては、行けなくなるだろう。
でも、それならそれでいい。ダメなら、それまでだ。
決して見放すという訳ではない。
近い将来に避けられない運命があると分かっている今、大切なのはその時まで歩き続ける事だ。
私が望んでいたのは平凡な"日常"。
その"日常"の先にある未来。結果はどうでも良い事なのだと、今になって気づいたのだった。