今日も一日が終わった。
朝起きて朝食を食べて、しばらくして昼食を食べて、そのうち夕方になって夕食を食べて寝る。
仕事を辞めてからというもの、やる事が無いと時間の流れがとても遅く感じる。
やる事が無いというのは少し誇張でもある。
食事はシュピの分も用意しないといけないし、掃除・洗濯など家事もやらなくてはならない。
ドアの向こうのシュピへの語りかけも忘れていないし、警戒も怠っていない。
私の体調だってあまり良くは無い。
何をやるにしても、体が重く感じて思うようにいかない。
日記ではあっさりと書いているが、実際は色々と失敗を重ねている。
見方によっては、以前よりも過酷な日々を送っているだろう。
しかし、私の中ではとてもゆるやかな時間が流れている。
かつてここまで穏やかな気分になった事はあっただろうか。
思えば、私はシュピとの生活で幸せを噛み締めながら、いつもどこかで焦っていた。
終わる事を恐れ、奔走していた。
「シュピのためだ」と、シュピの意思を無視してまで動くこともあった。
もし過去に戻れるなら、私は無駄な足掻きを一切やめて、シュピに寄り添うだろう。
遅かれ早かれ、終わりは必ず訪れるのだから。
心が穏やかになると、感覚が研ぎ澄まされてくるようだ。
見えなかったものが見えてくるし、聞こえなかった声が聞こえてくる。
私は最近まで、シュピを直接見ることが出来ないのが辛かった。
しかし今では、ドアの向こうにシュピの微笑を捉える事が出来る。
何を言っているのかも分かる。
――ジュセさんも、やっと気づく事が出来たのですね。
――もう、辛くないですよ。ずっと一緒ですから。
私がこの心境に達した事を、喜んでくれているようだった。
此処に至る事が出来るのは、生きる上で最も幸福な事ではないだろうか。
もう、恐れるものは何も無い。