オルフェアに珍しく雪が降った、冬の寒い日。
私の元へ、一通の手紙と小包が届けられました。
送り主は王都カミハルムイの有名な博士、ハネツキ様でした。
私は嫌な予感がしました。
そして博士の長い長い手紙を読み終えると、その場に崩れ落ちました。
どうして。どうして。
必ず帰ってくると約束したのに。
それからしばらくは何も考えられませんでした。
魂が抜けたような、無味乾燥な日々を送りました。
どれ程の時間が経ったかはっきりと覚えていませんが、ある時私は、ショックで忘れていた小包の存在を思い出します。
恐る恐る開いてみると、中にはボロボロの帳面が数冊入っていました。
それはあの子…ジュセの日記でした。
損傷が酷かったですが、少しでもあの子の気持ちを知れたらと必死で解読しました。
全てを知った時、私はこの事実を、あの子の人生を、より多くの人に知ってもらおうと思いました。
最終的に、親馬鹿と言われる事は十分承知で、こうして本を出版するまでに至りました。
このページまで読んでいただいた皆様にはなんとなく伝わっているでしょうか。
あの子はある事件によって、近い将来に訪れてしまうシュピさんとの別離に怯えながらも、普段変わりない生活…"日常"を守り続けようとしました。
自分達が置かれた状況を、精一杯楽しいものにしようとしていました。
しかし、元々の心の弱さからか時折ネガティブな内容も見受けられました。また他の帳面には、凄惨な現状を客観的に記した資料も挟まっていました。
そして私はあの夜、あの子の口から一部始終を聞いています。
私がこれから明らかにする内容は、もしかしたらあの子が触れて欲しくなかったものなのかもしれません。
しかし私は、この事件を招いた元凶を放置することが、あの子の想いを無かった事にすることが、どうしても出来ませんでした。
このような哀しみが繰り返されないことを願い、今、全てを告白します。