ママ、待ってるから。
あなたが来てくれるのを、いつまでも。
ずっと……。
「ママ…どこにいっちゃったの?」
広大な遺跡の深部。
薄暗い部屋で目を覚ました少女が覚えていたのは、母との僅かな思い出だけだった。
ここは何処なのか?どうして自分はこんな狭い所に閉じ込められていたのか?そもそも自分は誰なのか?
他の事は一切分からなかった。
「いたっ…!」
思い出そうとすれば頭がズキズキと痛み、耐えられなくなる。
これを何度も繰り返し、少女はついに諦めてしまった。
「…ううっ…。」
辺りには自分が入っていたシリンダーと同じものが無数に並んでいた。
中は濁った水で満たされており、妖しげな光を放っていた。
目を凝らして見てみると、中で黒い何かが不気味に蠢いていた。
「…いや…。」
気持ち悪い。
一刻も早くここから出たい。
ママに会って、思いきり泣きつきたい。
「…いかなきゃ。」
何もかも分からない中で、自分が自分であるという事を感じさせてくれるたった一つの存在。
"母"を求めて、少女は行動を開始した。
ゆっくり立ち上がると、おぼつかない足取りで部屋の出口へと歩き始めた。
しかし。
「……ひっ!!」