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リルチェラのズッ友

ねこ

[ねこ]

キャラID
: IZ027-165
種 族
: プクリポ
性 別
: 女
職 業
: 僧侶
レベル
: 130

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ねこの冒険日誌

2023-09-22 18:19:03.0 テーマ:その他

まちのこうふく

ここはとある町の商店街。

その一角には振興組合事務所があり、
表には長机に置かれた昔懐かしいガラポンの福引がある。
三百六十五日休まずそれはあり、
その商店街一番の人気のスポットである。

季節は夏。
連日うだるような暑さが続く。
振興組合事務所の理事長は法被を着て、
水分補給のペットボトルの水を近くに沢山置きながら、
今日も地元の人達に夢を与えている。

福引の特等はハワイ旅行だ。

福引券はその商店街で買い物をすると貰える。

地元の人達は色々な店で買い物をして福引券を集め、
ハワイ旅行を当てようと福引をいつも頑張っていた。

ある日、その振興組合事務所の隣に旅行代理店が出来た。

ハワイ旅行のポスターが目玉商品のように貼られていた。
開店祝いで一泊分無料という手書きの張り紙もしてあった。

ハワイ旅行に行きたかった人達はすぐに飛びついた。

毎日、色々な店で買い物をし、
福引券を貰う為に余計な買い物をしたこともある。
いつ当たるかも分からない福引を引くよりも、
その分のお金でハワイ旅行を直接買った方が安く済む。
そう考えたのだ。

けれど、旅行代理店を横目でちらちらと見ながら、
振興組合事務所の前で財布の紐を固くする人達もいた。

福引は何と言っても無料なのである。
買い物だって生活に必要なものだし、無駄ではない。
余計な買い物ばかりさせられているような気もするけれど、
余計なことは余計で、それは計算には入らない。
特等以外の景品だってある。
得しているではないか。
お金に余裕がないから買わないわけでは決してないのだ。
自分にそう必死に言い聞かせ、
周りにもそう必死に吹聴していた。

理事長も黙ってはいなかった。
旅行代理店に客を取られては商店街全体の利益にも関わる。
理事長にはそれを守る大きな責任があるのだ。
地元の人達の信用も失いたくはない。

そこで、理事長は考えた。
ガラポンの福引をもう一つ用意することにしたのだ。

今までと同じハズレのある福引に加えて、
三等二等一等特等しか入っていないハズレのない福引だ。
向こうが一泊分無料を付けるのなら、
こちらは商店街全体の利益に応じて、
福引券なしで福引を一回引ける日を設けよう。
恐らく月二回は確実に無料で福引を引けるはずだ。
一回きりの旅行代理店よりも太っ腹だ。

地元の人達は色めき立ち、大いに喜んだ。
この地域に住んでいて本当に良かった、
理事長は地元の人達を大切に想ってくれている、
商店街はだから暖かくて好きなのだ、
廃れさせては決していけない、と。

地元の人達は理事長からよく聞かされていたのだ。
このままではこの商店街も十年二十年持たず厳しい、
しかし地元の人達の為にもこの商店街を守りたい、
この町に希望を見出せず都会に出た私の子供もいる、
帰って来てもらう為にも頑張らなければ、と。

実際、「閉店セール」の張り紙がされている店もあった。
その店はもう三年以上も経営に苦しんでいる。

旅行代理店に入り、ハワイ旅行の申請を済ませ、
嬉しそうに出てくる家族連れの人達。
子供達も目を輝かせている。
ペットのトイ・プードルも尻尾を振って喜んでいる。
「いやいや、お前は留守番だよ。」と言いながら、
皆で笑っている絵に描いたような幸せな光景だ。

今までと同じように福引を回す人達はそれを見て、
こう言った。

「わざわざ買わなくても無料で行けるのにな~。
 しかも、前よりも当たりやすくなっているから、
 ハワイ旅行も一年以内にはきっと行けるだろう。
 お前達、夏休みは商店街でいっぱい買い物をして、
 福引を頑張ろうな。」

福引をしている父親の近くには、
野良犬と遊んでいる子供達がいた。
服は勿論この商店街で買ったもので、どこか見窄らしい。
母親は目の届く喫茶店でだるそうに涼んでいた。

日が暮れ、商店街の店も次々とシャッターが降りる。
もうすっかり人がいなくなったその頃、
振興組合事務所と旅行代理店から理事長と店長が出てきた。

「商売の方はどうだい?」と理事長が言う。

「おかげで繁盛しているよ。」と店長が答えた。

「な? 言った通りになっただろう?」と理事長は言い、
「遠くからお前を呼んだ甲斐があったよ。」とほくそ笑んだ。

二人は歩き始めると、
商店街にある店を営む人達もなんとはなしに集まって来る。

「理事長、今年はどこに旅行に行きましょうか?」

誰かがそう言うと、どっと大きな笑いが起こり、
皆は再開発で賑わう隣町の歓楽街に繰り出すのであった。

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